新近江名所圖会 第44回 湊町から鉄道町へ-米原-

米原市

 滋賀県唯一の新幹線停車駅であり、JR西日本とJR東海の乗り換え駅でもある米原は、いまもむかしも変わらぬ交通の集約する地です。
 とはいえ、古代から中世ごろまでは、米原の西にある朝妻湊が湖上交通の拠点として栄え、米原は戸数20戸ほどの寒村にすぎませんでした。ところが、江戸時代の初めごろから、彦根藩の後押しを得て入江内湖の東端に米原湊が開設され、中山道と米原を連絡する街道が整備されると、東国から大津方面へ物資を輸送する湊として繁栄しました。
 彦根藩は、米原湊を長浜湊や松原湊とともに「彦根三湊」として保護したため、朝妻湊に代わる物資集散地として、また北国街道の宿場町として栄えました。
 明治時代には、蒸気船が就航するなどの変化もありましたが、明治22年(1891)7月に米原駅が開業して東海道本線が開通すると、輸送の主力は船から鉄道に移り、米原湊は次第に衰退していきました。米原駅は東海道本線と北陸本線の乗り換え駅であるとともに、鉄道車両の保守点検を行う機関区や貨車を取り扱う操車場も併設され、鉄道町の様相を帯びるようになりました。
 東海道新幹線開通後(昭和39年)も、しばらくは米原駅の東側に集落が集中していましたが、昭和54年に米原駅西口が開設されると、新市街地が駅の西側に形成されました。近年は駅東側の再開発が計画され、東口にあった旧駅舎が取り除かれて新しい駅前が整備されつつあります。今後は駅東側の景観も大きく変容を遂げるでしょう。
 それでは、かつての米原湊と宿場町のあとをたずねてみましょう。

米原湊の掘割

米原湊の掘割

旧北国街道の街並み

旧北国街道の街並み

中山道連絡路と北国街道の分岐点

中山道連絡路と北国街道の分岐点

 米原駅東口を出てしばらく歩くと、国道8号線を斜めに交差する水路が見えてきます。大部分は暗渠と化してごくわずかがコンクリートで護岸された排水路と化していますが、これこそ、かつての米原湊の掘割にあたります。
 そのまま国道8号線を横断して少し歩くと南北に旧北国街道が見えます、再開発に伴う道路や区画の変更や、建物老朽化による建て替えが進みましたが、なおも昔ながらの建物が残って米原宿の面影をしのぶことができます。
 北国街道を北上すると、番場に抜ける中山道連絡路と北国街道の分岐点が見えてきます。分かれ道のたもとには、弘化3年(1846)に再建された道標(米原市指定文化財)が残っています。南面には「右中山道 はんハ(番場) さめかゐ(醒井)」西面には「左北陸道 なかはま(長浜) きのもと(木之本)」の文字が刻まれており、この道標の見ながら多くの旅人が往来していたのでしょう。

おすすめPoint

 「近江牛大入飯」(井筒屋)

 「近江牛大入飯」(井筒屋)

 米原駅はかつては東海道本線と北陸本線の乗り換え駅として賑わい、今は新幹線やJR東海・JR西日本の乗り換え客が利用しています。かつての米原駅には乗客へのサービスとして、各ホームに洗面所(文字通り煤で汚れた顔を洗う洗面台)や乗客に食品や土産を販売する売り子などがいましたが、鉄道の高速化によって無くなってしまいました。しかし、米原駅開業と同じくして駅弁(当時は「汽車弁当」と呼んでいました)を販売した「井筒屋」は健在です。
 おすすめは、やわらかでジューシーな近江牛のステーキが入った「ステーキ弁当」ですが、取材した日はあいにく売り切れで、代わりに購入したのが「近江牛大入飯」です。カレー粉で香りをつけたご飯の上に、牛の煮込みをのせた牛丼スタイルの弁当です。
 持ち帰って食べてもおいしいですが、ホームのベンチで弁当を食べながら、乗り換え駅の旅情を味わってみるのもよいでしょう。

周辺のおすすめ情報

キ555型 ラッセル車

キ555型 ラッセル車

 米原駅西口から徒歩10分ほどの場所にある米原公民館の敷地内に、一両の雪かき車が保存されています。 この車両は「キ550型」と呼ばれる複線用のラッセル車です。
 ラッセル車とは、車両の前方に取り付けられた排雪板を使って、線路上に積もった雪を脇へ押しのける方式の雪かき車です。単線用と複線用では排雪板の取り付け方が異なっており、単線は線路の両側へ、複線用は線路の左側へ雪を押しのけるようになっています。
保存されている「キ555」は、昭和18年に単線用ラッセル車から複線用に改造され、以降は東海道本線一の豪雪地帯である米原~大垣間の除雪に活躍しました。
 廃車後は、米原公民館に保存されましたが、窓ガラスは破損防止のため白色の板にとりかえられ、風雨に晒されているため車体に錆も浮いています。しかし、保存されているラッセル車は少なく、特に間近で見学可能な「キ550型」ラッセル車は北海道小樽総合博物館保存の「キ1557」と、米原公民館の「キ555」しかないはずです。(この2箇所以外に見学可能な「キ550」型の保存車両がありましたら、教示ください m(_ _)m)
 柵もなく自由に触れることができる貴重な保存車両なので一見の価値があります。でも、壊さないように大切に見てくださいね。

アクセス

【公共交通機関】JR琵琶湖線米原駅下車
【自家用車】名神高速道路米原ICから10分、駅前に有料駐車場あり


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(神保 忠宏)

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