調査員のおすすめの逸品 No.104 内部構造を探るとっておきツール-X線写真装置-

 遺跡から出土した遺物の内部を調べるために、X線写真装置を使用することがあります。これは、私たちが体の健康状態を調べるときに、レントゲン検査をするのと同じです。例えば、古墳から出土した鉄製の剣や刀などは、長年土に埋もれていたため、内部までサビが進んでいます。これらの遺物をX線で調べることにより、劣化の程度や文様や文字の有無など内部の状態を調べることができます。また、古代の住居跡などから出土した銅銭は、サビによりその文様が読めないものが数多くありますが、X線で調べることにより、その種類などが詳しくわかる場合があります。

X線写真室

X線写真室

X線用フィルム

X線用フィルム

コントローラ(X線の調節)

コントローラ(X線の調節)


 X線は、肉眼で見ることのできないものの内部にまで透過する能力があります。ものの材質や状態により、X線の強度や照射時間などを調節することで、鉄やブロンズなどの金属製品から、木製品・漆製品にいたるまで調査することができる、まさに万能のツールです。

 長浜市虎姫町に所在する北山古墳から、平成8年(1996)度に実施した発掘調査で、1枚の青銅鏡が出土しました。北山古墳は虎御前山の尾根筋にあった古墳で、発掘調査はキャンプ場整備に伴って実施したものです。この鏡は、古墳の主体部から、鉄剣や短甲などの鉄製品とともに出土しました。直径13.6㎝、重さ320gほどで、やや小型の鏡です。3枚の写真を並べましたが、それぞれ出土直後の写真、X線写真、保存処理後の写真です。

北山古墳青銅鏡(出土直後)

北山古墳青銅鏡(出土直後)

北山古墳青銅鏡(X線写真)

北山古墳青銅鏡(X線写真)

北山古墳青銅鏡(保存処理後)

北山古墳青銅鏡(保存処理後)



 出土直後の写真を見るとわかるように、サビに覆われて鏡の文様が見えにくい状態でした。内部の劣化状態を調査する必要もあったため、X線写真を撮影しました。X線写真には、朱雀・青竜・玄武・白虎の4種類の獣と「長子孫」と書かれた文字が浮かび上がりました。これらの文様により、中国の後漢時代に作られた獣帯鏡であることが判明しました。
 鏡本体には多数の亀裂が入るとともに、一部に「ブロンズ病」という銅製品に致命的なダメージをもたらすサビが発生していました。そのままでは危険な状態であるため、サビを取り除くとともに、文化財の保存のため特別に使用するアクリル樹脂を含浸させ強化しました。このように、文化財を保存するための事前調査として、X線写真装置は大活躍しているのです。
(中川正人)

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