調査員のおすすめの逸品 No.106 男性のシンボルを持つ木偶

左から大中の湖南遺跡2体、湯ノ部遺跡3・2・1・4号、烏丸崎遺跡1体

左から大中の湖南遺跡2体、湯ノ部遺跡3・2・1・4号、烏丸崎遺跡1体

 野洲市旧中主町の湯ノ部遺跡からは、1991年の発掘調査で4体の木偶が見つかっています。木偶とは木で作った人形(ひとがた)のことで、弥生時代のお墓などから出土することが多いようです。
 湯ノ部遺跡の木偶は、小さい順に1~4号木偶とされています。1号木偶はヒノキの一木で作られていて、全長は19.2cm、頭部・胴部・腰部・脚部からなります。顔面には目と口がうっすらと彫りこまれています。また、右肩から左腰にたすきを掛けたような掘り込みがあり、胸部には貫通していない穴があります。脚部は1本で表現されています。この木偶には、頭頂部や肩・腰に赤い彩色が残っていましたので、作られた当時は全体に彩色が施されていたと思われます。こうした特徴は、古墳時代の埴輪の巫女に似ています。
 2号木偶は全長35.0cmのヒノキの一木作りで、丸い顔面には目と口が彫り込まれています。脚部の裏側には穿孔途中の穴の跡があり、下端はほぼ平らに削られています。
 3号木偶は全長57.4cmで、樹種は唯一モクレン属の広葉樹です。頭部から下は連続して作られていて、末端は尖っています。頭部は六角形をしていて、顔面には左目が掘り込まれ、右目は焼き鏝で押し付けられたように焼焦げています。
 4号木偶は全長60.5cmで、頭部・胴部・腰部・脚部からなり、末端は平らに削られています。ヒノキの一木作りで、顔面には眉、目、口が彫り込まれています。この木偶の最大の特徴は、腰部に1.5cm大の貫通孔を開けていることで、その孔に長さ5cmの棒が挿入された状態で出土しました。

 これらの木隅は、弥生時代の方形区画の溝の中から、大量の土器や木器とともに見つかりました。この方形区画の溝は、全体を発掘していないのでその性格ははっきりとはわかりませんが、溝の上層からは弥生時代後期の土器が出土し、下層からは弥生時代中期の土器とともに木偶が出土しました。方形区画の内側では弥生時代前期と後期の竪穴住居各1棟が見つかっていて、溝の周辺には弥生時代後期の方形周溝墓が貼りついていました。こうした状況から、この方形区画は、弥生時代中期には祭場のような特別な場所だったのでしょう。

 木偶は、滋賀県内では、湯ノ部遺跡の4体のほかに、近江八幡市大中の湖南遺跡で2体、草津市烏丸崎遺跡・守山市下之郷遺跡・同赤野井浜遺跡で各1体の合計9体出土しています。いずれも弥生時代中期(2,000年前頃)の土器と一緒に出土しています。出土例は全国で15体以上ありますが、そのうち9体が滋賀県に集中していることは特別の意味がありそうです。
このうち、私がとくにおすすめしたいのが、湯ノ部遺跡の4号木偶です。木偶の下腹部に挿入された棒は、男性のシンボルを象徴したものであることは明らかですから、この木偶が男性像であることが判ります。これまで、大中の湖南遺跡の2体の木偶は、男女の像だろうという意見もありましたが、出土地点も形状も異なることから、男女1対とは断定されていませんでした。湯ノ部遺跡の男性シンボル付木偶の出土により、木偶は男女の使い分けがされていて、男女1対で当時の祭祀に用いられていたことが判りました。

(濱 修)

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