調査員のおすすめの逸品 No.11 金箔瓦-特別史跡安土城跡出土-

 遺跡の調査に携わる者なら、誰しも自らが調査する遺跡で目の前に現れた遺物や遺構に感激したり、興奮したことがあると思います。私も約20年間滋賀県内の遺跡の調査に携わり、いろいろな遺構や遺物と出会ってきました。
 では今回は、私が携わった出土遺物のうち、最もメディアへの登場率が高い逸品である、安土城跡で出土した金箔瓦をご紹介しましょう。

金箔瓦

金箔瓦


 時は平成10年の初冬、場所は安土城跡の搦手口です。この年は搦手道の最下部にあたる部分の調査を行なっていました。搦手道の最下部は道の痕跡が判然としない状況であったことから、その位置を探るための調査です。ところが、どこにも安土城時代の道の痕跡はなく、山からの斜面が湖に向かって落ち込んで行くような状況で、この斜面の直下から瓦がたくさん出土しました。ある日のこと、瓦が出土し始めた部分を掘り進んでいると、作業員の西野さんが叫びました。「岩橋さ~ん!金箔や!出たで!」急いで見に行くと、軒丸瓦が天地ひっくり返った状態で出土しており、少し顔を出した軒先の文様(瓦当面)の凹んだ部分には、金箔がべったりと貼られている様子が土中に見えました。「おっと、これは!」これまで城内で出土した金箔瓦は、金箔のかけらが残っている程度のものがほとんどでしたが、この瓦は金箔の残り方が非常に良いのです。作業員さん全員を呼んで、ひとしきり遺物を観察した後、「ほな、瓦全体きれいに出していきましょか。」と私。「こんなこわいモン、ワシよう掘らん。」と西野さん。そこで私が瓦全体を検出すべく掘ることになりました。軒先の文様部分に貼り付けられた金箔が剥がれないように竹ベラで慎重に掘り進めていきます。瓦当(軒先の文様のある部分)が徐々に姿を現し、金箔の残っている範囲は広がっていきます。どうやら文様の凹んだ部分に押された金箔はすべて残っていそうです。どれ位かかったでしょうか。ようやく全容が明らかになり、軒先の部分が約1/4欠損している以外は、ほぼ完全な形の金箔押しの軒丸瓦であることがわかったのです。しかも文様の凹んだ部分全面に金箔がきれいに残っており、土中の水分に守られて来たためか、金箔の輝きはほぼ安土城築城当時そのままの状態です。
 安土城跡では、主郭部(城の中心部分)を中心に、これまでにも多くの金箔瓦が出土しています。出土する金箔瓦は、軒丸瓦や軒平瓦が最も多いのですが、鯱(しゃち)瓦などの特殊な瓦にも見られます。しかし出土する金箔瓦のほとんどが、金箔を貼るための下地の漆や金箔の一部しか残っていないもので、今回の例のように金箔が築城当時のまま残っている例はほとんどありません。
 今年の安土城考古博物館の秋季特別展のポスターに、この瓦が登場しました。また、最近では「世界ふしぎ発見」というテレビ番組でもこの瓦が紹介されていました。ポスターやテレビ、本などでこの瓦を見かけると、出土したその瞬間の感激を思い出すのです。

(岩橋隆浩)

《参考文献》
『特別史跡安土城跡発掘調査報告』10 滋賀県教育委員会 2000

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