調査員のおすすめの逸品 No.134 日本の埋蔵文化財調査を支える私たちの「右腕」

 私がおすすめする逸品――というか誇らしげに語るつもりの逸品――は、調査の補助スタッフさんです。当協会の場合、調査補助員さんとお呼びしています。わたしたちの仕事は大きく分けて、野外の「発掘調査」と屋内で進める「整理調査」がありますが、今回は整理調査のスタッフさんを紹介しましょう。

水洗作業

(1)水洗作業

 このスタッフさん達のお仕事は、発掘現場から掘り出されてきた出土品の水洗い(画像1)、乾燥後の収納、出土品の台帳作り、発掘調査報告書に掲載する遺物の実測(画像2)、そのトレース(画像3)などです。

実測作業

(2)実測作業

 どんな方々かというと、いろんな立場や経歴の方がおられるので一概には言えませんが、一番多いのは「ママさん」かも知れません。小学生~高校生ぐらいのお子さんがおられる方も多く、就業開始時間の8:30までに一通りの家事を済ませ、終了時間とともに飛んで帰って、夕食の支度をされています。私自身も、駆け出しの頃は我が子のように厳しく躾けて頂きましたし、結婚や育児のことなども随分と相談に乗っていただいました。第2のママたちと呼んでも過言ではありません。

トレース作業

(3)トレース作業


 このような方々をなぜ「逸品」として紹介するのか?――それは、まさに私たち調査員の「右腕」だからです。画像4をご覧下さい。この画像(画像4)は、あるスタッフさんが描いて下さった縄文土器の実測図です。本来ならば、専門教育を受け、埋蔵文化財の専門職員としての自負をもつ調査員が自分で実測すべきところですが、どうしても描きたい/描かねばならない一部の資料を除き、大量の資料実測をスタッフさんに助けていただくことになります。この図を描いて下さった方も、育児をしながら働いて下さっていたママさんで、学生時代は考古学と関係のない別の勉強をされておられたそうですが、子育ての過程で縁あってこの世界に飛び込んできて下さいました。元々のセンスの良さに加え、努力と経験の蓄積を活かして、毎日コツコツと緻密な作業に立ち向かって、まさに私達の右腕です。全国の埋蔵文化財の整理調査の場面で、このようなママさんのお力添えがあって、成果が報告書にまとめられています(画像5)。
実測図

(4)実測図


トレース図

(5)トレース図


 埋蔵文化財の調査は、埋もれていた文化財を再び日の当たる場所に引き戻し、その価値を新たに生み出していく作業にほかなりません。スタッフさん達はわたしたち調査員の仕事に欠かせない「右腕」。物にたとえるのは憚りがありますが、まさにわたしたちが誇る「逸品」です。(瀬口眞司)

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