調査員のおすすめの逸品 No.17 いい仕事してますね~!-浄土屋敷遺跡出土古瀬戸筒型香炉-

古瀬戸筒型香炉出土状況

古瀬戸筒型香炉出土状況

 浄土屋敷遺跡は、東近江市上平木町に所在しています。すぐ北西には、甕割山があり、そのふもとに広がる静かな田園の中に遺跡があります。出土した遺物をみると、縄文時代から近世に至る幅広い時期の遺物が出土しています。 そのなかでも中心となるのが中世の遺構群です。14世紀半ばから15世紀にかけての室町時代前期の集落跡です。この時期の県内の集落遺跡みてみると、大型の溝(大区画溝)で囲まれた屋敷地の中に、建物を囲う小規模な溝が巡る特徴と同じであることがわかっています。今回紹介する古瀬戸の筒型香炉は、小規模な溝(小区画溝)と考えられる遺構から出土しました。
 出土したのは6月初めごろ、初夏の日差しが強くなってきた頃でした。遺構を検出する作業を終え、検出された溝を掘り進めました。埋土である暗黒褐色の土を掘り下げ ていくと「主任さん、なにかでましたで」と溝の掘削をしていた作業員さんが声をかけてきました。急いで作業員さんのところに駆け付けてみると、確かに淡い黄緑色の 口縁部が顔を出しています。私は、「とりあえず慎重に周りを掘り下げてください」とお願いしました。そして、しばらくすると、「主任さん、これ全部残ってるで」と 声をかけられたので行ってみますと、何と完品の陶器が姿を現していました。
古瀬戸筒型香炉

古瀬戸筒型香炉

 記録を取ってから取り上げてみたところ、少しヒビが入っていましたが14世紀半ばから15世紀にかけての古瀬戸の筒型香炉であることが判りました。私は思わず「これ、なんでも鑑定団にもっていったら中島さんに“いい仕事してま すね~”って言ってもらえますよ」とその場に居た作業員さん達に冗談まじりに、この出土品の凄さを話しました。
 この周辺の遺構からは、青磁の碗などの輸入品の陶磁器も出土しています。もちろん、出土品の中には、日用品である土師器の皿や信楽の擂鉢などもありますが、出土し た筒型香炉や青磁の碗などは、非日常の「雅(みやび)」で「風流な」香りが漂ってきます。完品の姿・形の美しいこの香炉、自分の調査した遺跡で出土した最も印象に残っ ている逸品です。

(坂下 実)

《参考文献》公益財団法人滋賀県文化財保護協会『浄土屋敷遺跡現地説明会資料』2008

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