調査員のおすすめの逸品 No.18 マーコ(真弧)―考古学を支える小さな道具

竹真弧(タケマーコ)

竹真弧(タケマーコ)

 写真の道具はマーコ(真弧)といいます。あまり見聞きされない道具だと思いますが、考古学調査には欠かせない逸品の一つです。
 考古学では出土した遺物を正確な図面に写し取り、記録を作成します。この作業を実測といい、作成した図面を実測図といいます。実測では、モノのかたちを忠実に図面に写し取らなければなりません。というのは、土器のわずかな外形のちがいが時代の違いや地域的な特徴を示すことがあるからです。考古学者はモノのかたちにとことんこだわります。さあ、そこでマーコの出番です。マーコを遺物に押しあて、輪郭を図面に写し取るのです。
 マーコを考古学調査に取り入れたのは京都大学名誉教授 故小林行雄博士といわれています。若き日の小林博士は全国の弥生土器を実測し、集成することで弥生土器研究の基礎資料を整備されたのですが、その実測を蔭で支えたのがマーコでした。マーコは、それまでスケッチや略測図にとどまっていた遺物の図を正確な実測図にまで高めたのです。

針真弧(ハリマーコ)

針真弧(ハリマーコ)

 当時のマーコは竹ヒゴを二枚の板に挟んだ簡単な構造で、考古学者が自作していました。石器実測のために竹ヒゴを縫い針にかえたり(針マーコ)、竹ヒゴよりも正確なラインを引くために、竹の筬(おさ)―織機の部品を針として用いたり、針がスムースに動くように二枚の板にフェルトを貼りつけたり、それぞれで工夫をこらして製作していました。
 その後、埋蔵文化財調査が増加するにしたがい、竹製マーコが市販されるようになりました。この市販品は大変高価で、学生当時の私は、さんざん迷ったすえに発掘調査のアルバイト代を貯めて購入したことを覚えています。さらに近年には、ミシン針メーカーによって金属針を用いた金属製マーコも開発されました。この金属製マーコは重量の軽量化・針先形状の変更・針が抜けおちないようにストッパーを設置する等々、改良が加えられ、いっそう使いやすくなってきていました。
 私は長らく木製マーコを使ってきましたが、やはり正確さと使いやすさは金属製マーコの方が格段に上だとわかってからは金属製マーコを愛用しています。しかし、最近この金属製マーコの生産が終了したという知らせを耳にしました。こんな便利な道具を将来の考古学者が使えないのは大変残念に思います。正直なところ、採算が合うようにはとても思えないのですが、どなたか再生産していただける奇特な方はおられないものでしょうか。

(辻川哲朗)

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