調査員のおすすめの逸品 No.28 発掘にもデジタル化の波が… -方眼マイラー-

 考古学や埋蔵文化財の発掘調査や整理調査で成果を記録する手段として重要な作業に、“実測”があります。現地調査では、見つかった遺構(住居や墓などの生活の痕跡)や土の堆積状況や出土した遺物(土器や石器や木製品など生活に関連するもの)の出土状況を観察し、平面形や断面状況を記録します。整理調査では遺物の平面や断面の形、調整や特徴などを書きとめます。単なるスケッチではなく、縦横方眼に組まれた割り付けをもとに正確に図化していく作業です。いずれの場合も、報告書を作成する上での基本資料となり、調査過程において、なくてはならない作業です。縮尺は20分の1、10分の1、2分の1、実物大など、必要とされる精度によって異なりますが、基本的には鉛筆やシャープペンシルで1mm単位の方眼紙に記録していきます。

方眼マイラー

方眼マイラー

 この方眼紙の種類の中に雨の日の記録作業や木製品の実測に効果を発揮するのが、ここで紹介する逸品“方眼マイラー”です。「マイラー?それって、航空会社のマイレージのポイントをためる人のこと?」いや、いや、そうではありません。透明なフィルム(ポリエステルフィルム)に方眼が印刷してあり(無地ではなく方眼があるのがミソ)、水に強く、水のなかでも文字が書けます。土が着いたりして少々汚れても、拭くことで落とすことができます。雨の日は発掘作業を中止しますが、決められた期間内に調査を終了しなければならない時や、突然の雨天でも、今日、記録作業をしておかなければ後の調査工程に支障が生じる、そんな時に威力を発揮するのがこのマイラーです。また、最近は調査例がほとんどありませんが、琵琶湖の湖底遺跡の潜水調査での記録にも使われました。
 木製品の整理調査では、水の中で保管しなければ腐食してしまう木製品の実測にあたって、水分を補給しながら実測を進める必要があります。木製品を方眼紙の上に置いて実測を行いますので、水に強いマイラーはもってこいのアイテムです。特に滋賀県は、琵琶湖岸を中心に低湿地に分布する遺跡が多く、そこから出土する木製品も多量で、規格も数センチのものから大型品、丸木舟(約全長5m)にいたるまで、多岐にわたります。ですから、ものによって長大なマイラーが必要な場合があり、ロール状になった製品をよく使います。
 ところが、近年のデジタル化の波がこの紙にも押し寄せています。従来は、土木関係の工事図面や機械工学などの図面作成などにも使われていたようですが、デジタル化によってコンピューターの画面上での作業やデジタルデータでのやり取りが主流となり、わざわざ紙に図面を描いたり、紙に打ち出す必要がなくなっているようです。そのため、方眼マイラーの需要が激減し、生産が大幅に縮小され、今ではロール状のものは生産中止になり、A2版のカットした規格のものしか手に入らなくなっています。
 発掘調査や整理調査でもコンピューターによる実測やデジタルトレース、デジタル写真撮影(ネガフィルムの減少も大きな課題)といったデジタル化が進みつつありますが、最初にもお話ししたように発掘調査において調査員による観察と手作業による記録は、重要なウエイト占める作業です。それに必要なマイラーは貴重な逸品なのです。今後、なんらかの対応や工夫が求められていますが、メーカーさん、できる限り生産を続けてくださるようお願いします。

(吉田秀則)

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