調査員のおすすめの逸品 No.38 大きな大きな遺物 -清滝寺・能仁寺遺跡出土常滑焼大甕-

常滑焼大甕出土状況

常滑焼大甕出土状況

 今回は、私がこれまで整理調査で取り扱った中で一番大きな遺物、清滝寺・能仁寺遺跡(きよたきでら・のうにんじいせき)出土の「常滑焼大甕」をご紹介します。
 米原市清滝にある、弘安6年(1283年)に開基された清滝寺は、京極家の菩提寺として、歴代当主の墓所(国指定史跡)があることで有名な天台宗の寺院です。この寺院の南西側に隣接する寺院跡について、平成19年度から継続して発掘調査を実施しています。平成19年度の調査では、室町時代後期の石積遺構(いしづみいこう)や、穴の中に大きな甕を据(す)えていたと考えられる、埋甕遺構(うめがめいこう)が2基みつかっています。
 この時出土した遺物は、平成20年度に整理調査を実施しました。埋甕遺構からみつかった2点の甕のうち1点については、破片がほとんどそろっており、ほぼ完全な形に復元することができました。
 復元できた大甕は口径66.cm、高さ78.1m、容量312.52?のたいへん大きなものです。この甕は、底板となる粘土板(底土)に、同じ幅の粘土紐を何段も積み上げて成形する、「紐輪積み」という技法で作られています。内面には、8~9㎝間隔で、何段にも粘土紐が輪積みにされた痕跡が残り、粘土紐どうしの間には、指による接合痕がはっきりと残っています。用途としては、何かを貯蔵するために使用されたと考えられます。
 しかし、発見された時には内容物が残っていなかったため、何を入れていたのはまだわかっていません。他府県で報告されている同時期の埋甕遺構の事例を見てみると、味噌・塩・油・水・穀物などの貯蔵などのほかに、古銭(北宋銭など)を蓄銭した例もあります。

常滑焼大甕

常滑焼大甕

復元状況

復元状況




 復元作業は、ばらばらになった破片をセメダインで接合し、欠落部分には、石膏(せっこう)を補填材(ほてんざい)として注入する方法で実施しました。破片それぞれの重量がかなりあるので、接合作業は、底部から何回かにわけて少しずつ行いました。
 全て組上がってしまうと、実測図を描く際に、厚みが測りにくかったり、内側の器面の様子が観察できなかったりするため、実測図も接合しながら底部から少しずつ描いていきました。
 これらの作業が、完了するまでに、一人の人が毎日作業をして、10日もかかりました。さらに、この甕は整理作業の完了後に、埋蔵文化財センターのロビーで展示することになりましたが(現在も展示中!)、復元・実測作業をした場所から、展示場所に移動するのに、5人がかりで40分もかかりました。(ふつうに歩くと、2分ほどの距離です。重くて、割れないように運ぶのがたいへんでした。)
 大きすぎるために、取りあつかいに気を使いますが、この大甕は、製作した当時の陶工の技術の高さや、愛知県の知多半島から滋賀県の米原市清滝まで割れないようにこの甕を運搬した、運送業者の人々の苦労を偲ぶことができる、まさに貴重な逸品です。

(田中 咲子)

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