調査員のおすすめの逸品 No.68 日本人の知恵-晒し(さらし)

晒し

晒し

 着物を普段着として着ていた頃にくらべ、近頃の暮らしの中では、「晒し」を使うことは減ってきました。
 「晒し(さらし)」とは、一般的には染色前の一反(幅34㎝、長さ12メートル前後)の木綿の平織りの布を、水に晒し糊を落として天日干ししたものや、そのまま染めずに裁断、縫製した布製品の全般を指します。素材は木綿のものを一般によく見かけますが、麻の晒しもあり、奈良晒、越前上布などの伝統織物として大量ではありませんが生産されています。
 帯状のまま使う用途としては、江戸時代頃には下着としてよく使われたとされます。現在では、お祭りの時などに法被や半纏の下に使われたり、応援団員が学ランの下に使用するなど、特殊な場面で使われます。また妊婦の腹帯として使われるものとしても知られ、安産祈願の神社などで配布されたり、赤ちゃん用品の店にも置かれたりします。日本には定着している風習のようですが、諸外国では見られない習慣で医学的根拠はあまりないそうです。包帯素材であるガーゼが希少だった頃には包帯代わりに使われたり、腰痛対策のコルセットのように使用するなど、医療的な使い方もあるようです。
 最近、着物を着る人も、機会もめっきり減りましたが、着物の着付けをする際には、晒しで補正をすると着崩れしにくく、また汗取りも兼ねるため一年中使えるものとして重宝するそうです。
 また、素材として使われることもあり、布巾や乳幼児の肌着などに縫ったり、襦袢の下に着る肌襦袢を縫ったり、着物の裏布を共布でつけたとき柄が透けたりするのことを防ぐ裏地として使われるなど、さまざまな使われ方をしてきました。
染めものに使った「晒し」

染めものに使った「晒し」

 さて、ここから本題です。この晒し、文化財の世界では梱包用の資材として使われています。晒しはキュッと縛ると緩みにくく一度固定するとずれにくいことから、抱えきれない大きな甕などの大型の焼物でも上手に結わえれば、晒しだけで持ち運びできます。
 また梵鐘などの大型でかつ非常に重量のあるものも、要所要所をくるむのにも使い、持ち運び用の際にはお神輿のような木組みの支えに乗せ晒しで固定するなど大活躍します。モノに直接当たるところは、布幅を広げて力のかかり方を分散するようにしたり、長さは用途によって切ったり結んでつないだりして調節します。かなり大きなの力がかかっても切れないので大きい重いモノも安心して運べます。また、収納しておくときは布をピシッと広げて包帯のようにくるくる巻いておきます。そうすると使うときにとても扱いやすいものです。
 最近、私がよく使う用途は、染めものの材料を煮出して漉すのに使ったり、ジャガイモなどのつぶしたものを水にさらして澱粉を抽出する際に漉しとるのに使ったりします。小豆などでさらしあんを作るときもイモ同様にさらして漉すのに使えます。
 カツオなどの出汁をとるときにも、晒しで漉すと滓の少ない澄んだ出汁になるので、プロの料理人は「晒し」や「ネル」で漉したりするそうです。私がいつも晒しを買いに行く京都錦市場の店では、流石「京の台所」、「晒し」も目の粗いの細かいものの2種類あり、ガーゼやネル、タオルの白生地も切り売りしてくれます。そこのお店の方曰く「出汁を漉す布も、普通の食堂みたいな店は晒しやけど料亭とか一流のとこはネル地を使わはりますなぁ。こしあんも○○(某有名和菓子店)さんは目の細かい方の晒しを使わはりますわ」と色々教えてくれます。
 ちなみに「晒し」は意外と売っているところが限られ、服地屋さんにはおいていません。和装用品や染色用の布等を扱うところや、専門的な調理用品を扱うところ、薬局などでも扱っているところがあるそうです。
 「晒し」が便利なのは、手で簡単に洗濯ができるし汚れも落としやすく、また乾きが速いのがなによりです。自分の使い勝手に合わせて長さも調節できます。工夫次第でさまざまなことに利用できるので、なかなか重宝ですよ。

(小竹 志織)

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