調査員のおすすめの逸品 No.81 茶臼

 私が紹介するおすすめの逸品は茶臼です。

逸品81 茶臼

茶臼(上から遣り木・上臼・下臼・受け皿・台座)


 茶臼は、碾茶(てんちゃ)という抹茶専用の茶葉を挽いて、抹茶をつくるための道具です。写真の茶臼は石製で、上臼・下臼・受け皿・台座の四つの部分から出来ています。下臼・受け皿・台座が固定され、下臼の芯棒を軸に、上臼の側面に取り付けた木製の遣り木を持って、上臼を回転させて使います。上臼と下臼の接触面には歯が刻まれていて、上臼の上面に開いた穴から入れた碾茶が歯の刻まれた接触面に広がり、回転による摩擦で抹茶ができる仕組みです。歯の刻まれ方により臼の回転方向が決まりますが、この茶臼の場合は左回転で受け皿へ抹茶が出てきます。もし逆に回してしまうと、抹茶は臼の中心へ集まってしまいます。
 滋賀県立安土城考古博物館では、昨年9月より「うつけ茶屋」という茶会を開催しています。お客さまご自身が茶臼で碾茶を挽き、その挽きたての抹茶をご自身で点(た)てて飲んでいただくという催しです。この「うつけ茶屋」で大活躍しているのが、ここで紹介している茶臼なのです。現在、茶臼に限らず臼というと日常生活ではなかなかお目にかからないものとなってきました。臼の種類には、2つの石を磨り合わせる磨臼(すりうす)と杵(きね)を使う搗臼(つきうす)がありますが、茶臼は大豆などを挽く臼と同じ磨臼の一種です。そうした磨臼の上臼か下臼が、庭石に転用されていたりするのを目にした方もおられるのではないでしょうか。このように現在では多くの人の暮らしのなかでは現役で活躍する臼たちが少なくなっていくなか、この茶臼は博物館で本来の役割を果たしているのです。
 「うつけ茶屋」では、これまでに500名以上のお客さまにこの茶臼で挽いた抹茶を召し上がっていただきました。そのお客様のほとんどが、茶を挽くことが初めて、臼そのものに接するのも初めてという方ばかり。子どもから大人まで、重い臼を回してご自身が飲む分量の抹茶を何とか手に入れ、その挽きたての抹茶の香りと味を楽しんでいかれます。
 
逸品81歯ブラシ

歯ブラシ


 順調に回を重ねている「うつけ茶屋」ですが、その主役である茶臼の活躍を影ながら支える逸品があります。それが、写真の歯ブラシです。どこにでもある普通の歯ブラシですが、ご覧のようにブラシ部分の減り方は尋常ではありません。茶臼は、使い終わって片付けるときに、上臼・下臼に刻まれた歯の凹み部分に詰まっている抹茶を取り除く必要があります。そのまま放っておくと、凹み部分に詰まった抹茶は湿気を帯び、次に茶臼を使うときにその湿った抹茶が出てくることになります。ですので、使用後は必ずブラシなどで凹みに詰まった抹茶を掻き出す作業を行います。この作業のくり返しで、歯ブラシはこのような姿になったのです。目立つ主役の活躍を支える影の逸品として、この歯ブラシも紹介させていただきました。
 「うつけ茶屋」は不定期開催です。詳細につきましては、滋賀県立安土城考古博物館までお問い合わせください(℡0748-46-2424)。

(大槻暢子)

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