調査員のおすすめの逸品 No.95 調査道具のリサイクル

 発掘調査では、直径が1mを超えるような大きな穴や直径が20cm以下で深さ50cm以上の深い穴など、いろいろな大きさや深さの遺構の掘削に直面します。こうした遺構の検出・掘削には、通常「手ガリ(両刃鎌)」や「手スコ(移植ごて)」が使われます。しかしながら、直径が小さくて深い穴は、こうした道具ではきれいに掘削できないことがあります。これまで「調査員の逸品」でも数多くの発掘道具が紹介されてきましたが、今回紹介する道具は、調査員の逸品というよりも作業員の逸品といえる道具です。

手ガリの比較(左.新品の手ガリ 右.再生手ガリ)

手ガリの比較(左.新品の手ガリ 右.再生手ガリ)

 当協会は滋賀県内各地で発掘調査を実施していますが、来ていただいている作業員さんたちは以前にいろいろな職業に就かれていた方が多く、遺構を掘る道具についてもその経験を生かして、作業がはかどるように新たな道具を作ったり、発掘調査とはまったく関係ないいろいろな分野の道具(たとえば料理道具など)を使ったりと、工夫されることがよくあります。今回紹介する道具は手ガリの再生品です。
 手ガリが最も活躍する場面は、遺構面(遺構が確認できる面)を削って遺構を検出したり、写真を撮影する時に遺構や遺構面をきれいにしたりする時です。当然、遺構の掘削中にも、おもに仕上げの道具として大いに役立っています。しかし、直径が20cm以下で深さ30cmを超えるような小さな柱穴などの仕上げには不向きです。なぜなら、手ガリはの柄は長さが約40cmあり、刃の部分だけでも新品の時には長さ16cm、幅6cmもあり、前述のような小さな穴では、柄や刃の長さが邪魔になってうまく使いこなせない場合が多くあります。

通常の手がりの使用例

通常の手がりの使用例

再生手がりの使用例

再生手がりの使用例

 こうした穴の掘削の仕上げのためにある作業員さんが作られたのが、長期の使用で刃が減ったために廃棄予定だった手ガリの柄を短く切り、刃の部分を長さ7cm、幅4cmにカットし、小さくしたものです。この大きさですとたいていの小さな遺構の中でも自在に動かせ、仕上げにはもってこいの道具です。ついつい刃が消耗して使い勝手が悪くなると捨ててしまうのが常ですが、このように工夫をすれば特別な道具へと変身を遂げ、発掘調査に役立つ道具になるのです。この道具を使用する度に、縄文時代・弥生時代は言うに及ばず、それ以降の時代の遺物にも見られる道具の再使用・再利用がだぶって思い浮かびます。現在と比べて物資の豊富でなかった過去の時代の人々の知恵と、現代の人々の知恵のつながりを感じられずにはいられない逸品です。
(中村 健二)

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