調査員のオススメの逸品 夏休みの自由研究企画② 江戸時代の風流人‐大津廃寺跡出土の陶器‐

今回は、第221回でも取り上げた滋賀県庁前にある大津廃寺跡の調査で出土した、江戸時代の一風変わった陶器についてご紹介します(遺跡の概要については第221回を併せてご参照ください)。
平成29年度に実施した大津廃寺跡での大きな調査成果は、江戸時代の上水道施設が良好な状態で残っていたことが挙げられますが、この上水道施設が設置される少し前の時期に掘られた井戸の中から、一般的にはあまり見かけない陶器がいくつか出土しています(写真1)。

写真1 大津廃寺跡で検出した井戸

写真1 大津廃寺跡で検出した井戸

井戸は直径1.7m、深さ2.4mの円筒形に掘削されたもので、井戸枠や石組みなどはありませんでした。上水道施設と重複しており、井戸が埋没したのちに上水道施設が設置されたことがわかっています。井戸の中からは染付磁器や信楽焼の擂鉢といった陶磁器類のほか、漆器椀や櫛、多くの箸といったバリエーション豊富な遺物が出土しており、その中に「おっ!?・・・???」と思う陶器が含まれていたのです。
一つ目は口縁部に歪みのある碗で、にぶい赤褐色の鉄釉を下地として内外面に不透明な白色釉がまばらに掛けられる、趣のある器です。口縁部の破損した部分を黒漆で接いで補修していることから、とても大切に扱われていたものかもしれません(写真2)。

写真2 歪みのある陶器の碗

写真2 歪みのある陶器の碗

二つ目は、本来窯焼き時に火炎などの影響を受けないように製品を保護する、耐火性容器である匣鉢(こうばち/サヤ)の破片です。流通後の消費地である当地で出土していることもさることながら、焼かれたあとに底部を擦り削られているものもあり、本来の用途と異なる目的で使用されていたと考えられます(写真3)。

 

 

写真3 本来は窯焼き時に使用される匣鉢

写真3 本来は窯焼き時に使用される匣鉢

三つ目が特に珍しい文様を持つ鉢で、日本や東アジア的とは言い難いデザインの装飾が施されています。あまり見られない形態的な特徴では、高台部分の対面する2方向に凸字状のえぐりを入れ、口縁部付近には十字方向の4箇所に波状の耳が貼り付けられています。また、内外面の下半部には赤褐色の顔料が全体に塗られ、上半部にはひだ状の網目文様や「己」字状の幾何学文様や放射状文様が描かれています。装飾的な趣向が凝らされ、類例が検索できないことから、一般的に流通していない資料とみられます(写真4)。
このように珍奇な陶器類がまとまって出土していることから、その所有者はハイセンスな風流人といった人物が想定されます。

 

写真4 珍しい文様のある陶器の鉢

写真4 珍しい文様のある陶器の鉢

今回ご紹介した陶器などの出土品は、滋賀県埋蔵文化財センターで夏休み期間中(7月25日~9月2日まで)に開催される『レトロ・レトロの展覧会』で展示される予定です。県内各地で見つかった様々な出土品や最新の発掘調査成果とともに、是非とも間近でご覧ください。ご来場をお待ちしています!

(小林裕季)
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