調査員オススメの逸品 第207回 青春カメラから中高年の相棒へ オリンパスOM-3とOM-3Ti その1

【はじめに】
 もう三十年以上も前の、今は昔のような話だが、父が東京の或る私立大学で勤続三十年を迎えた年のことである。父が言うには、勤続三十年を記念して、大学から十万円相当の贈り物があるとのことである。その贈り物は、十万円の範囲でこちらが希望を出し、大学がそれを購入してプレゼントしてくれるのだという。こんな慣習が今でも続いているか定かではないが、古き良き昭和と言うべきか、何とも長閑で美しい慣習である。今日の時勢なら、商品券でも送ってきて、あとはそちらでよしなに、といった塩梅だろう。そのあたりにも、時代性がうかがえよう。さらに父が付言するに、成人式や大学入学などで何もしていないから、この際、お前の欲しいものを頼んでやろうということである。そういうことであれば、有難く承ることとし、お願いしたのがオリンパスOM-3であった。

その1 写真

OM-3+50㎜マクロF2、OM-3Ti+90㎜マクロF2+モータードライブ2

【名機OM-3の魅力】
 OM-3の発売に先立つこと一年前、1983年にオリンパスOM-4が発売されている。オリンパス初の超高級機で、機能としては、中央部重点測光に加え、スポット測光を初めて本格的に搭載したカメラということになる。最高八点まで測光可能なマルチスポット測光は、中央重点測光ばかりだった当時としては画期的だった。そして、私としては機能は勿論のこと、特にデザインに強く惹かれたのである。
 私自身美術史をやっていることもあり、見た目・外観への拘わりは強い。内面や思想を疎かにするわけではないが、何事もまずは形状の分析から入る。研究対象の仏像や神像は言うまでもなく、人相も、家電製品も、果てはティシュBOXのデザインまで、あらゆるところに及ぶ。そして、特に拘わってきたものの一つに、カメラデザインがある。学生時代、カタログを集めては色々と比較するのが好きだった。勿論、性能も比較するが、いくら機能がすばらしくてもデザインが好みでなければ食指は動かない。
 OM-4は、小型ながら実に精悍なフォルムで、職人の道具という雰囲気を醸し出している。デザイン面で一ヶ所だけ、双手を挙げて賛成しかねるという程度のささいな不満点があるにはあったが、それとて我慢ならない程のものではない。また、OM使いと言えば、岩合光昭氏や栗林慧氏などが有名だが、このころ故木原和人氏がOM-4を駆使して印象的な自然写真を立て続けに発表していた。野山の植物を撮ることも好きだった私にとって、このカメラへの憧れは日増に強くなっていった。
 そんな中、翌84年に発売になったのがOM-3である。OM-3とOM-4は同一サイズで、価格設定も同じ。と言うことは、その当時のシステムでは珍しく、メーカーを代表する最高級機種が2機種並ぶことになる。外観は、OM-4にあるセルフタイマーや軍艦部のオート・マニュアル切り替えスイッチが無いという違いが目立つ位で、両者殆ど同一に近い。マルチスポット測光などの基本機能も殆ど変わらないが、若干機能に制約がある。一つは、OM-4が露出面で絞り優先オートとマニュアルが使えるのに対し、OM-3はマニュアル専用機である。ただ、電子制御式のOM-4に対し、電池が無くともすべてのシャッターが使える機械式だという安心感がある。無論、電池なしでは、精密な露出設定は全く機能しないことにはなるけれども。いま一つはストロボで、OM-4はTTLオートが使えるのに対し、3ではマニュアル発光のみとなる。
 私の撮影スタイルでは、自動露出は殆ど使わないので、マニュアルのみであろうが一切痛痒を感じないが、ストロボオートが使えないのはちょっと不便である。さらに、上記の通りOM-3ではセルフタイマーボタンが省略されている。セルフタイマーは低速シャッター時などに使用することも多いので、それが無いのはやはり多少不便をかこつ。価格が同じなので、機能面を考えれば普通はOM-4を選ぶことになるのではないか。
 しかし、上記したデザイン面におけるOM-4のささいな不満点とは、実はセルフタイマーボタンの形状であった。OM-3は、そのセルフタイマーボタンを省くことで、余分なものをそぎ落とした、より精悍な形状を実現している。武士は食わねどの通り、デザイン最優先で、多少の不便さには目を瞑ることにしたのは言うまでもない。また、4ではなく3という機種名が、勤続三十年には相応しかろうという思いもあった。

 つづく・・・

(山下 立)
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