調査員オススメの逸品 第216回 過去と現代 しじみが語る人間と貝の深い関係

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レトロ・レトロの展覧会のクイズラリーでもらえる粟津湖底遺跡出土シジミ貝の化石

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粟津湖底遺跡出土のシジミ(右)と現在スーパーで売られているシジミ(中)

 島根県の宍道湖と共に滋賀県の琵琶湖は日本でも有数のシジミの産地です。琵琶湖のセタシジミは、その名の通り、すでに約7000~6500前の縄文時代早期末から瀬田川周辺で捕獲されています。瀬田川の畔に築かれた石山貝塚は日本最大の淡水産貝塚で、その主要な貝化石はセタシジミです。その後、約4500年前の縄文時代中期の粟津湖底遺跡の第3貝塚でも主要な貝として食されています。現在でも、瀬田川周辺では、しじみ汁など滋賀県の特産品として食されています。
 粟津湖底遺跡第3貝塚から出土したセタシジミの貝化石は、発掘後、詳細な考古学的分析をへて、現在は写真のようなカードを入れて埋蔵文化財関係のイベントなどで、歴史の教材として活用されています。当協会が滋賀県教育委員会と協力して、毎年、夏に実施しているレトロ・レトロの展覧会では、前年度の発掘調査の成果の公開と共に、埋蔵文化財を身近に感じていただけるように展示した遺跡や遺物に関する子供向けのクイズを実施し、正解された子供さんに前述の粟津湖底遺跡第3貝塚のセタシジミの貝化石を歴史の教材として持ち帰っていただいています。その貝を渡すとき、約4,500年前の貝と言って渡すと、「え-すごい」などと喜んでいいただくと同時に、一緒にいらっしゃった親御さんの中には、「しじみってこんなに大きかった?」と疑問を呈する方もあります。
 ある時、某大学に行って大学生に粟津湖底遺跡第3貝塚のセタシジミと現在スーパーなどで販売されている産地の違うしじみの食べた殻を比べてもらい、先ほどの親御さんの疑問をぶつけてみました。「現在のしじみは小さくて、昔のしじみはなぜ大きいのか。」
 当然のことながら、粟津湖底遺跡第3貝塚のセタシジミと現在スーパーでは同じしじみでも厳密には種類が違います。種類の違いからの大きさが違うこともあるかもしれません。私はしじみに詳しいわけではないので、その可能性は否定ができませんが、しかしながら、普段スーパーなど売られているしじみは写真真中の大きさか、さらに小さいものが多いではないでしょうか。
いろいろな意見の中に成長が充分でないしじみを捕獲しているから小さいという意見がありました。正にその通り。縄文人はある程度の大きさのものを捕獲しているのに対して、現在、スーパーで売られているものは成長が充分でないものが捕獲され、家庭へとたどり着き、私たちに食されているのです。写真の左端は、スーパーで売られていた粟津湖底遺跡第3貝塚と同じ大きさのしじみです。現在のスーパーにも縄文時代と同じぐらいの大きさのしじみが売られていることもあるようです。縄文時代と現代では環境も人口も全く違うので、どちらの食し方が良いのかわかりませんが、粟津湖底遺跡第3貝塚出土の貝化石はほんの数センチの小さな遺物ですが、縄文人の環境への配慮や思考が背後に隠れていることがわかる本当に貴重な逸品です。

中村 健二
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