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新近江名所図会

新近江名所圖會 第265回 石山観光会館―石山貝塚の「貝層剥ぎ取り断面」が観られる現地の施設―

大津市

瀬田川の川辺、伽藍山の南麓に位置する石山寺、その石山寺の山門前にある駐車場の地下には、縄文時代の貝塚が眠っていることは、このシリーズでも何度かお伝えしてきました(第10回・第122回)。今からおよそ8,000年ぐらい前に営まれたこの貝塚は、石山貝塚と呼ばれ、びわ湖を取り巻く人々の長い歴史を紐解く、貴重な遺跡の一つです。
前回(第122回)は、現時点で判明している事柄を中心に、石山貝塚の調査成果について紹介させて頂きましたが、今回は、その石山貝塚を取り巻く現在の状況について、少し見てみたいと思います。

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石山貝塚の案内看板
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貝層剥ぎ取り断面

石山貝塚では、これまでに少なくとも17回以上にわたる発掘調査が行われていますが、その中でもっとも有名な調査は、昭和25・26・29年に平安学園考古学クラブによって行われた発掘調査です。前回ご紹介した調査成果の多くは、この調査の時に確認された事柄であり、昭和31年に刊行されたこの調査の発掘調査報告は、現在でも石山貝塚の内実の一端を示す基本文献となっています。
さて、この平安学園による発掘調査以外にも、貴重な調査成果が提示されています。1983年(昭和58年)に大津市教育委員会によって実施された調査では、貝塚そのものの「断面」の「剥ぎ取り」作業が行われています。この「貝層剥ぎ取り断面」は、貝塚そのものが露頭していた状況を示すものであり、また貝層そのものの堆積状況を改めて現在確認し得る、貴重な資料といえます。
なお、その時に作成された「貝層剥ぎ取り断面」は、現在は、大津市埋蔵文化財調査センターと、滋賀大学教育学部(図書館)、それから石山貝塚が地下に眠る石山寺駐車場を眼下に見下ろす石山観光会館(石山寺観光案内所)の3カ所に保管されています。

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石山観光会館

【おすすめポイント】
ちなみに、石山観光会館のロビーに展示されている貝層剥ぎ取り断面は、丁寧に観察すると、貝が密集する中にも、様々な状況が確認できます。例えば、貝殻がしっかり残った状態で堆積している部分と、貝がボロボロに破砕されて堆積している部分があります。前者は一気に貝殻が堆積しそのまま埋没した状況を、後者は堆積した貝殻がしばらく露頭し、その上をヒトや動物が行き来し貝殻が破砕されていった状況を、それぞれ示していると考えられます。そこには、「時の流れ」を感じずにはいられません。他にも、貝の種類や堆積の傾向など、当時の人々の生活の様子を示す多くの情報を、この剥ぎ取りは留めています。

是非一度、この「貝層剥ぎ取り断面」をご自身の目で直にご覧ください。きっと8,000年前の人々の営みの様子を、想起して頂けることと思います。

鈴木康二

アクセス
【公共交通機関】京阪石山坂本線「石山寺駅」下車、徒歩15分
【自家用車】京滋バイパス石山ICから約5分

参考文献
滋賀県立安土城考古博物館2012『【人】【自然】【祈り】共生の原点を探る―縄文人が語るもの―』

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