記事を探す

オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.33 遺物の保管術-タッパー容器-

その他
コンテナに収められたタッパー容器
コンテナに収められたタッパー容器

今回、私がお勧めする逸品は、「タッパー容器」です。主に食品などを入れる容器がなぜお勧めなのか、意外に思われる方は多いかもしれません。ですが、遺跡から出土した遺物を保管するのに大変便利なアイテムなのです。
発掘調査を行うと、土器・石器・瓦・骨・木製品・金属製品など、昔の人達が使っていた様々な材質の遺物が出土します。それらの遺物は、発掘調査後、事務所に持ち帰り整理調査を行います。
整理調査では、発掘調査報告書を作成するために必要な記録をとるため、洗浄・実測・接合・写真撮影などの記録作業を行います。遺物は、遺物カード(出土遺跡・遺構・層位・日付を書いたもの)と一緒にコンテナと呼ばれるプラスチックの箱に入れて保管します。しかし、コンテナの中に遺跡から取り上げられた様々な遺物が乱雑に収められていると、探すのに大変苦労します。また、小さなもの・薄いもの・脆弱なものは、遺物同士が当たって破損する恐れもあります。そこで活躍するのが、「タッパー容器」です。

木製品を収めたタッパー容器
木製品を収めたタッパー容器

タッパー容器には3つの利点があります。

1つ目は、「値段の安さ」です。安価なので大量に購入することが出来るので、手軽に遺物を小分けにして保管することができます。

2つ目は、「サイズの豊富さ」です。小さなサイズから大きなサイズまで、縦横のサイズのみならず深さもいろいろあります。また、形も正方形のものから長方形、円形と豊富なバリエーションがありますので、様々な形状をした遺物を収めるのに適しています。そのうえ、中にクッション材を入れれば、遺物を安定・安全に保管することができ、持ち運びも容易になります。そして、蓋付きで丈夫なので、重ねての収納が可能です。加えて容器の外側に遺物名を書いたシールを貼っておけば、コンテナの中の遺物が探しやすくなります。

収蔵庫内に保管されているコンテナ
収蔵庫内に保管されているコンテナ

3つ目は、「気密性・安全性の高さ」です。出土した遺物の中には、取り扱いに注意が必要なモノがあります。例えば、木製品や金属製品などです。まず、木製品は、湿った埋蔵環境下から出土する場合が多く、大部分の木の成分が抜け出て脆くなっているため、自然乾燥させると縮んだりヒビが入ったりするなど変形してしまいます。そのため、薬品などを用いた保存処理が必要になります。この保存処理までの仮保管の間は、埋蔵環境に近い湿った状態にしなければなりませんが、タッパー容器は、気密性が高いため、水漬け状態でも保管することが可能です。次に、金属製品は錆びの進行抑制のため、温湿度の管理が必要です。タッパー容器内にシリカゲルなどの乾燥剤を入れて保管しておけば、錆を進行させる空気や水分の侵入を抑制することができます。
整理調査が終わり、報告書が刊行されると、遺物は全てコンテナに収められ、収蔵庫に収納されます。その際にも、必要に応じてタッパーに小分けして入れられます。
このように、タッパー容器は、遺物の保管の際に大活躍します。安くて丈夫な容器なので、今後も考古学の現場で、どんどん活用されていくことでしょう。

(具志堅有紀)

Page Top