記事を探す

オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.41 大ガリ -発掘調査の醍醐味-

その他
ガリ 刃の部分の形状・大きさが異なる (左:手ガリ 中:大ガリ 右:半月)
ガリ 刃の部分の形状・大きさが異なる (左:手ガリ 中:大ガリ 右:半月)
大ガリ使用例
大ガリ使用例

日本各地で行われている発掘調査の現場を見られたことがありますか?
一般的な発掘調査のイメージは、出土した貴重な遺物をハケと竹ベラで土を少しづつよけながら調査を進めている光景ではないでしょうか?
その光景は、発掘調査の中で最後の方にやって来る、ハイライトとも言える部分です。調査員や補助員、作業員さんは、そこに至るまでに長い道のりを歩いてきます。体力と気力、知恵を振り絞って遺跡の謎に立ち向かっているのです。
発掘調査の方法ですが、まず、地面をバックホー(地面を掘削する機械=重機)で遺構面(遺構が見える地層)まで掘り下げます。その後、ガリ(土を薄く削って土の色の違いを確認する道具 ※商品名:月型ホー・草刈りホー 通称:半月・草カキなど、農作業で雑草を除去するための道具)などで遺構検出を行い、見つかった遺構を移植ゴテで掘り下げていきます。その時に遺物があれば竹ベラやハケで輪郭を出す作業をします。このシーンがテレビなどでよく見かける場面なのです。その後、写真撮影、実測と作業が続き、発掘調査が終了します。私たちは、この作業を暑い日も寒い日もそうで無い日も繰り返します。
簡単に言ってしまえばこのようになるのですが、一つの発掘調査において竹ベラやハケの出番はこの通りわずかなものなのです。
そんな発掘調査の中でおそらく最も過酷な作業の一つに数えられるのが、遺構検出です。その作業にはもちろん、説明したとおりガリ(大/小・半月形/三角形があります)を使います。しかし、最近の発掘調査は大ガリ・半月をほとんど使いません。みんな手ガリ(小さいガリ)を使っています。手ガリとは片手で持って土を掻くもので、その作業はもちろん立ったままではできません。遺跡の調査を除いてみると、あちこちで作業員さんが膝をついいてでチマチマと土を削っています。かつて、大ガリでもくもくと作業をやっていた豪快な風景は、手ガリに取って代わられました。
今は手ガリも使って土を削りますが、私の若い頃にはそんなちまちました道具はなく、大ガリで豪快に土を削っていました。ここ数年は現場を離れていますが、大ガリで土を削る時の音はしっかりと耳に残っています。
私は右利きなので右手を前にして構えますが、疲れてくると左右を交代し、連続して作業に励みます。もちろん、休まずに作業するためです。削る土の質は、若干砂気のある土が最も気持ちよく、「ジャッジャッ」と言う音とともに土が勢いよく削れていきます。反対に粘土質の強い土は、刃に付くと離れずいらいらしますし、乾くと今度はコンクリートのように堅いのでNG。また、石だらけの土は、石が刃にあたり刃こぼれをおこしますし、刃が石をひっかく音がとても不快なのでこれもNGです。砂の層は削りやすいのですが、柔らかすぎてちょっと歯ごたえが無い感じです。 私は、若い時には誰にも負けないと言えるくらいに、大ガリでの遺構検出が大好きでした。
大ガリを使う遺構検出はあまり好かれていないようですが、これほど楽しく夢中になれる時はありませんでした。しかし、今は体重が増え、体力がみるみる落ちたため、大ガリで作業するのがつらくなってきました。一心不乱に大ガリを動かすことが困難になってきました。そこで、手ガリを使っていたのですが、目の前の土は気持ちよく削れてくれるのですが、作業範囲が右手の届く範囲に限られているため、あまり進みません。また、お腹が出ているのでしゃがんだままの姿勢はきついのです。両手で柄を握って大きく削ってみたのですが、めまいがしました。
やはり遺構検出には、私のおすすめの逸品「大ガリ」に限ります。

(三宅 弘)

Page Top