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調査員のおすすめの逸品 No.52 赤外線デジタルカメラ

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今の世の中、デジタル時代、身の回りのものの多くがどんどんデジタル化しています。身近なところでは、写真撮影が従来のフイルムカメラからデジタルカメラに急速に移行し、誰でも気軽に撮影できるようになりました。

(写真1)赤外線ビジコンカメラ
(写真1)赤外線ビジコンカメラ

今回紹介するのは、赤外線デジタルカメラです。赤外線カメラは、遺跡から出土した木簡や墨書土器などの文字資料を調査するために欠かせないツールです。
赤外線が文化財の調査に利用されたのは以外と古く、奈良の法隆寺金堂壁画の保存調査のため、1939年に赤外線ガラス乾板法という特殊な方法で写真が撮影されたようです。以来、歴史的建造物や美術工芸品をはじめ、出土資料として木簡の調査に頻繁に使用され現在に至っています。
人の目で見える光は可視光線と呼ばれ、その範囲は限られています(約0.38~0.75μmの波長領域)。可視光より波長の短い側に紫外線やエックス線、波長の長い側に赤外線の領域があります。赤外線は、墨などの主成分である炭素にとくに吸収されるため、墨書が肉眼では確認できなくても、内部に墨が残っている場合は赤外線が反応し見ることができます。

(写真2)赤外線デジタルカメラ
(写真2)赤外線デジタルカメラ

赤外線による記録法として、赤外線フィルムによる直接撮影をはじめ、赤外線カメラによる観察があります。最近では赤外線カメラの方式が、アナログである従来の赤外線ビジコンカメラ(写真1)から赤外線デジタルカメラ(写真2)に主流が移っています。赤外線ビジコンカメラと赤外線デジタルカメラを比較すると、一見して解像度(鮮明さ)に差がみられます(写真3)。これは双方のカメラの画像の取り込み方式の違いとともに、技術的な進歩の結果、センサーの性能が格段にあがったためです。
赤外線デジタルカメラのおかげで、肉眼で見ることが困難であった古代の文字が、これまで以上にくっきりと見ることができる、まさに逸品です。

(写真3)アナログとデジタルの比較
(写真3)アナログとデジタルの比較

(中川正人)

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