調査員のおすすめの逸品　No.96　渾身の1冊―『戦国三武将と近江の城　信長・秀吉・家康の琵琶湖戦略』

今回ご紹介するのは、豊富なグラビアが自慢の『シリーズ近江の文化財006　戦国三武将と近江の城』です。
わたしたちの仕事の目的の一つに、適正な調査成果を皆様に素早く還元することがあります。還元にあたって重要な役割を担っているのが、この『シリーズ』です。2010年から刊行を重ね、今回ご紹介する本冊は、その第6弾にあたります。
本冊の企画は、平成21・22年度に実施した佐和山城跡（彦根市佐和山町）の発掘調査を契機に立案されたもので、そこからより喜んでいただけるように内容を充実・拡大し、近江にゆかりの深い6人の天下人とその城のエピソードをぎっしり詰め込みました。

執筆は、我が協会が誇る精鋭調査員たち！　私が「逸品」としてお勧めするのは、彼らが撮影してきた60数枚のカラー写真です。大手出版社の同様なガイドでは、多くの場合、ライターの方とは別の「写真のプロ」が撮影されていますが、こちらでは「調査のプロ」が、自分の原稿のために自ら撮影してきました。素人ながら、なかなかの迫力カットだと思いますが、いかがでしょうか。
私が担当した「彦根城」ではパノラマ写真を提供しました。400年前、彦根藩第二代藩主直継は、新城の候補地設定に当たり、①佐和山城改築、②磯山新築、③彦根山新築の三案を立て、結果として③案を採用し、新たな歴史の礎を作りました。場合によっては、彦根の町の姿は全く違った可能性もあるのですが、その歴史的経緯の解説を補うために、彦根城天守に登って、佐和山城から磯山城に至るパノラマ写真を撮影してきました。ちょっとした写真ですが、他にはなかなかないカットかも・・・。その他の執筆者たちも、脚で稼いだカットを多数盛りこみましたので、ぜひご堪能ください。

肝心の内容ですが、こちらもモチロンおすすめ。先日、私の家族も大好きなＮＨＫの『歴史秘話ヒストリア』で信長の築城思想が取り上げられていました（2012年11月14日放送「魔王が棲む 魅惑の城～最新研究！ 織田信長 美しき城づくり」）が、それと同様に――あるいはそれ以上に丁寧に――琵琶湖を取りまく信長・秀吉・家康の戦略を広く、詳しく解説しています。お手頃価格で頒布もしていますので、よろしかったらこのホームページからお取り寄せ下さい。

『シリーズ近江の文化財006　戦国三武将と近江の城』

（瀬口眞司）