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調査員の履歴書

『インタビュー/調査員の履歴書』№19「私たちの仕事とは?―多様な意見の渦の中で研ぎ直す」

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Q.お名前と所属をお願いします

瀬口眞司(せぐちしんじ)です。もともとは調査員ですが、現在は総務課にある企画室に配属されています。

Q.前回は人材育成とからめて、ご自身の学生時代のお話を伺いました(こちら『調査員の履歴書№1』)。今回は少し違った角度からインタビューします。最近はどんなお仕事をしていますか?

 総務課企画室は、いろんな仕事をします。最近の仕事で一番悩ましかったのは、「第六次中期計画」の作成でした。「中期計画」とは、私たちの組織がその使命やビジョンを実現していくための中長期の計画で、「第六次」は令和5年度からの5か年計画となります。昨年度、その作成に事務局的な役割で携わりましたが、気絶したくなるくらい悩ましかったです(笑)。

Q.あらら(笑)。それはなぜですか?

 職員の考え方がいい意味で多様だからです。「中期計画」の作成にあたっては、職員全体に組織の課題やその対処法の案の聴き取り調査を行ったうえで、担当委員が寄り集まって「私たちの仕事」やその意味、自分たちの持ち味などを整理し、組織のミッションや生存戦略、将来のリスクへの方策を考えていくのですが、あらかじめ用意された正解なんかありません。どんな考え方や方策を選択していくべきなのか、当然意見が分かれ、角を突き合わせていくことになります。多様な意見の渦の中でぐるぐる回り続けたりして、簡単には前進できませんでした。

 一方で、意見が多様なのはとても健全だとも思いました。これから社会はさらに大きく変わっていきます。今までの常識だけでは対応しきれなくなるはずです。そんな時代を生き抜いていくには、似通った考えの集団だけでなく、色々な発想をもつ組織の方がきっと良い。今回の計画作成では、いわば第1の矢を選択しましたが、それとは違う考え方の2本目、3本目の矢がすぐに用意できる組織の方がやっぱり健全だと思います。

Q.いろんな議論をしたようですが、瀬口さんが特に重視したのはどんなことでしたか?

 いろいろあるのですけれど、個人的に重視して、結果として私の中で研ぎ澄まされたのは根っこのところ──そもそも「私たちの仕事」とは何なのか──といったところです。

 「私たちの仕事」は、大きく分けて4つの柱で構成されているように思えます。第1と第2の柱は文化財の「調査」と「保存」です。ここでいう文化財とは、人々の「知恵と工夫の結晶」です。遺跡には数千年前、数百年前のこの「知恵と工夫の結晶」が埋まっていますが、土地の開発に伴い影響を受けてしまうことがあります。そんな時、土地の開発に先行し、埋もれていた文化財を発掘「調査」して、その調査記録や出土品を「保存」して後世に引き継げるようにするのが、第1と第2の柱です。

Q.第3と第4の柱は?

 「研究」と「活用」です。「研究」とは文字通り「研ぎ究める」ことです。私たちが調査し、保存してきた文化財の中には過去の知恵と工夫がぎっしり詰まっています。けれども、文化財が自らそれを語ることはありません。ですから、その意味や価値の読み解きに挑み、研ぎ究め、物言わぬ文化財に代わって発信していくことは私たちの大切な仕事です。この過程がないと、物言わぬ文化財の意味や価値は世間に知られず、ひいては「調査と保存」の意味や価値もまた埋もれてしまいます。これまで人はどう生き抜いてきたのか──それを文化財の中から見つけ続けていくこと、それができる人材を育てていくこと。これは私たちに課せられた大切な仕事だと私は思います。

 最後の「活用」とは「用いて活かす」ことです。汗みどろになりながら調査・保存し、研究してきた成果を、地域の皆さんのお手元に届け、その暮らしや「地域づくり」に活かしていただく仕事です。もちろん地域づくりには、それを担う人材や後継者も不可欠です。だから「人づくり」もまた大事な仕事になる、と私は考えています。

右:調査結果を記録した「報告書」、中:調査記録等をもとに読み解きを深めた研究「紀要」、左:読み解いた成果を皆様にお届けする「連続講座」パンフレット

Q.なるほど。では、これからの抱負はどうですか?

 「第六次中期計画」の作成過程では、いろいろ悩みましたが、先ほど語らせてもらったような4つの柱を意識しながらより良い形で仕事をしていけるとよいなぁ、と思っています。いろいろな考えを持つ職員がいる集合体なので、そのほかにも面白い意見があるかもしれません。そんな多様性も活かしつつ、「豊かな滋賀づくり」に役立っていきたいと思います。これからも皆様のお力添えをお願いいたします。

(瀬口眞司)

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