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調査員のおすすめの逸品№380 守山市横江遺跡で見つけた「土地の神様」へのお供え

守山市

 横江遺跡は、守山市横江町に位置する遺跡で、縄文時代から室町時代の集落跡として知られています。調査は令和5年度から令和6年度まで行われ、弥生時代の方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)とよばれているお墓や、古墳時代の溝、平安時代や鎌倉時代の掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)などが見つかりました(写真1)。それらの遺構からは多くの土器が見つかり、当時の横江町周辺の様子を物語る貴重な資料となりました。

写真1 横江遺跡

 これらの遺構のなかから、今回は掘立柱建物について詳しく紹介していきたいと思います。掘立柱建物はその名のとおり、地面に穴を掘って柱を据えた建物のことです。そのため、私たちが発掘調査を行った際には柱を据えた穴に土が入った状態で見つかります。写真2のように埋め戻した土と地面の土とで、色の差があるのが分かるでしょうか。この写真の柱穴は茶色の土に白色の埋土が入っているためまだ分かりやすいのですが、なかには黒色の土に少し薄い黒色の土の遺構がある…なんていう遺構もあるので、場所によって遺構を見つける難易度は変わってきます。なかには柱だったであろう木材が穴の中にそのまま残っていることもあります。

写真2 柱穴検出状況

 柱穴のなかには、木材の他に土器が入っていることもあります。横江遺跡では柱穴のなかから小型のお皿が2枚出てきました(写真3・4)。柱穴のなかから土器が出てくることはよくあるのですが、大半が小さなかけらで本来の姿を想像するのが難しいものです。しかしこの柱穴からはきれいな状態で、皿の口の部分を合わせるような形で見つかりました。きれいな状態で出土するものは、土地の神様に対する建物仕舞いの儀式として、建物使用後に埋納されたものだと考えられています。

写真3 柱穴内から出土した土器(1枚目)
写真4 柱穴内から出土した土器(2枚目)

 また、横江遺跡では様々な構造の掘立柱建物が検出されています。その一部をご紹介すると、床面積がおよそ36坪もある大型の建物(写真5)や、約10m×約2mの細長い建物(写真6)などが見つかっています。

写真5 大型掘立柱建物
写真6 細長い建物

 ほかではあまり見かけない、このような特徴的な形状の建物のほかに、ほかの遺跡でもよく見かける小~中型の建物も見つかっていますが、それぞれがどのような用途で使われていたのか、出土した土器や建物の特徴から検討していきたいと考えています。地面の上の様子が残っていれば分かりやすいとは思うのですが、そうもいかないのが発掘調査の大変なところであり、おもしろいところでもあります。

 今回紹介した横江遺跡から出土した遺物については、安土城考古博物館にて開催される令和7年度の「あの遺跡は今!」にて展示されます。期間は10月11日(土曜日)と12日(日曜日)です。気になる方はぜひ、足を運んでみてくださいね。

(三好佑佳:調査課)

★★ お知らせ ★★  

滋賀県立安土城考古博物館は2025年3月18日にリニューアルオープンしました! その概要は【コチラ】、詳しい内容は【滋賀県立安土城考古博物館公式ホームページ】をご覧ください!

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