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調査員のおすすめの逸品№396 特別編「卑弥呼の時代の墓みっけ!~成果展示ができるまで~」

守山市

 当協会は、守山市土地開発公社からの依頼により、笠原南遺跡(守山市笠原町)の発掘調査を令和6年度から実施しています。このたびその成果の一部を展示しましたので(写真1)、ご案内かたがた、その展示の裏側についてご紹介いたします。

写真1 現在の展示会場

1 展示情報

 展示タイトル:「卑弥呼の時代の墓みっけ!」

 開催場所:守山市役所1Fサブエントランス 文化財情報発信スペース。

 開催期間:令和8年7月27日から10月16日まで(平日9:00~16:45)。

 そのほか:市役所の一角にある広々としたサブエントランスでの展示です。どなたでも無料でご覧いただけます。 

2 そもそも笠原南遺跡とは

 笠原南遺跡は、守山市にある主に弥生時代~古墳時代の集落遺跡です。今回の展示では、令和7年の調査で見つかった弥生時代末、すなわち卑弥呼の時代の墓について、実際の出土遺物を交えながら紹介しています。

 この調査では、計6基の墓がまとまって出土しました。6基のうち2基は前方後方形周溝墓で、この地域の長の墓とみられます。前方後方形周溝墓2基のうち片方からは土器がまとまって出土しており、この時代の墓にまつわる儀式について考えるよい手がかりとなっています。今回の展示では、この墓から出土した土器をお見せしています。この中には「ミニチュア土器」や「底部穿孔壺」といった日常生活で使わない土器も含まれています。ぜひ会場に訪れ、墓から出てきた土器の実物を見てみてください。

3 展示の舞台裏 

 テーマの設定

 ここからは、今回の展示ができるまでを紹介します。「展示のテーマ(どこの何を展示するのか)」「ターゲット層(誰に向けて展示するのか)」「展示のコンセプト(展示を通して何を伝えるのか)」を明確にしておきます。今回の場合だと「テーマ」=「笠原南遺跡の出土品を」、「ターゲット層」=市役所に訪れるあらゆる人」、「コンセプト」=「(ターゲット層の多くにゆかりのある)守山市における、何千年もの前のくらしを知ってもらう」です。

 同じものを展示する場合でも、「誰に展示するか」「展示を通して何を伝えたいか」が異なることで展示のしかたが大きく変わります。特に今回の場合、ターゲット層が「市役所に来る人」であり、「歴史や考古学に詳しくない・興味がない」可能性があります。こうした人たちにも見てもらいやすい・わかりやすい展示にする必要がありました。

 遺物の選定

 展示する遺物を選定します。この際、「①の項目で決めたテーマに沿っていること」「器種(壺・高杯など土器の種類)が一目でわかること」の両方に合致している遺物を選ぶようにしました。この時点で遺物の大まかな配置をメモしておきます(写真2)。

写真2 展示の配置案

 写真の選定

 遺物とは異なり、出土遺構は本物を展示で見ていただくことはできません。その代わり、遺構は写真を使ったパネルでお見せすることになります。パネルは大型であるため、展示できる枚数が限られているほか、展示物の中でも特に遠くから見えるものです。それゆえ、限られた枚数の中で、人目を惹きかつ展示内容に沿っている必要があります。今回の展示では、これらを満たすために真上からの写真や周りの風景が写った写真を選んでいます(写真3)。

写真3 パネルの作成案。どのような写真を選ぶかをメモしている

 パネル・キャプションの作成

 展示に用いるパネル・キャプションを作成します。①の項目でも書いたように、展示を見る人は必ずしも歴史や考古学に対する事前知識があるとは限りません。そうした人々にとっても分かりやすい内容にするため、できるだけ専門用語は避け、日常で用いる言い回しにしました。また、歴史や考古学に興味がない人にも足を止めてもらうため、パネルの文章はキャラクターの会話形式で進めたり、絵や写真を多くしたりなど、通りがかかりでも目を惹く内容にするよう工夫しました。また、発掘担当者として、内容が間違っていないか、間違っていなくとも誤解を招く表現でないかについても気をつけました。パネル・キャプションでは、こうした分かりやすさ・キャッチ―さ・正確性を追求するため、複数人で内容を確認し、何度も検討を行いました。

 展示のシミュレーション

 展示ケースに近い環境で遺物を並べ、遺物の選定や位置が適切か・必要な資材(五遺物を載せる展示台など)は何かを検討します(写真4)。②の時点で大まかな遺物の配置はメモで記していますが、紙の上と実際に遺物を並べるときでは見え方が大きく異なります。より分かりやすく・見栄えがするような展示にするため、ここで遺物の選定や配置が大きく変わることがあります。

写真4 展示シミュレーションの様子

 遺物の搬入

 実際の展示ケースに遺物・パネル・キャプションなどを並べます(写真5)。パネルを並べる際は、パネル同士の位置が均等か・高さが揃っているかを意識しました。また、実際の展示する環境は⑤でシミュレーションしたものともまた異なり、ケースによる高さの制限が出たり光の入り方で見える印象が変わったりします。これも踏まえ、遺物の位置や用いる展示資材を⑤から変更しました。

写真5 展示準備の一幕

4 調査担当者にとっての展示とは

 発掘調査担当者にとっての展示とは「自分たちの仕事についてわかってもらうチャンス」です。私は仕事として毎日現場で発掘調査を行っています。そのため、調査で見るさまざまな物事や発掘調査そのものが自分の中では当たり前のものになっていました。私が当たり前のように見るモノや使う言葉は、展示を見に来る人には馴染みがありません。展示がこうした人に伝わる表現になっているかは、展示準備のあらゆる局面で意識させられました。また、会場が市役所である以上、展示以外の目的で会場に来ている人が多く、その中でも歴史や考古学に興味がない人もいます。歴史や考古学に興味がある人にもない人にも展示を楽しんでもらうため、「分かりやすさ・キャッチ―さ・正確さ」を担保し、そのバランスについても考える必要があります。一般の人々に発掘調査や我々の仕事を伝えるのは、一朝一夕で出来るほど容易なものではありません。そのためには、つねに「多くの人に分かりやすい調査成果の伝え方」を考える必要があります。私は今回の展示準備でこれを痛感すると同時に、仕事への向き合い方が少し変わりました。

 「展示の裏側」は以上となります。もしよろしければ、ぜひ会場に足を運びいただき、この記事に書かれていた「気を配ったポイントはどこだろう?」と探してみていただけれると幸いです。

(森田真由香)

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