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調査員のおすすめの逸品  №258  これから考古学を学ぶ学生さん必見-日本考古学事典-

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日本考古学事典 三省堂:2002年刊行
日本考古学事典
三省堂:2002年刊行

第232回に引き続き、今回も私からは便利な文献を紹介したいと思います。今回ご紹介するのは『日本考古学事典』です。
この事典も第232回で登場した『滋賀県の地名』などとともに私が重宝している事典の一つです。事典の内容としては50音順に著名な遺跡はもちろん、特徴的な遺物、さらには放射性炭素年代測定科学分析の方法などについても記載されています。この事典のありがたい点は各項目の特徴を記載するだけではなく、研究史がおさえられていることです。そのため項目によっては1ページ以上におよぶものもあり、調べるというよりは「読む」事典となっています。例えば、「銅鐸」などは戦前以来の長い研究史があるため、当然その記載量も多くなっています。
個人的な内容にはなりますが、具体的にこの事典に助けられたエピソードをご紹介したいと思います。
大学に入学し、考古学を勉強することになった私。しかし、根っからの考古少年というわけではなかったので、先輩たちが主宰する勉強会に参加してもわからない用語ばかりではじめのうちは理解が追いつかないこともありました。知らないことが多いため逐一先輩に聞いてばかりもいられず、かといってわからないことを放置したままではますますついていけず…。とにかくその都度、知らない用語を調べてみようと思ったのですが、知らない用語に関わる論文を全て読むというわけにもいかないので、授業で聞いたことのあった『日本考古学事典』を開いてみることにしました。面倒くさがり(?)な私にとってもサクサクと検索でき、知識を吸収できるこの事典はまだ考古学を学びはじめた私にとってとてもありがたい存在でした。
しかし、この事典が真価を発揮してくれたのはこれよりも数年後のことになります。大学院2年目の6月ごろから就職試験を受け始めたものの、修士論文などに手間取りなかなか試験勉強に集中できずにいました。なじみのない地域については知らない考古学的知識もまだまだ多く、不安な状態のまま専門試験を迎えそうになった私は再び『日本考古学事典』を頼ることとしたのです。時間がない中で効率的に勉強をすすめることができ、無事、試験を乗り切ることができました。今日、私が発掘現場に立っているのも、もしかするとこの事典のおかげ、という部分が大きいのかもしれません。
先述したように、非常に情報が検索しやすい事典になっているため、特に考古学を学び始める方々におすすめしたい事典です。就職試験の際にもぜひご活用を!
(山口誠司)

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