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調査員のおすすめの逸品 №291 思いもよらない道具の使い方-製図用テンプレート編

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写真1 テンプレート
写真1 テンプレート

遺跡から出土した遺物の記録方法の1つに拓本があることは、本シリーズ「第233回 夏休みの自由研究企画① 東洋伝統の秘技で〈文様〉を写し取れ! 墨を使ったコピーのワザと道具-拓本道具の三種の神器(画仙紙・墨・タンポ)-」で詳しく紹介されています。今回はさらに踏み込んで「目からウロコ!」のワザの1つを紹介します。
拓本は画仙紙という書画用の紙を用います。この時、対象となる遺物に画仙紙を密着させますが、拓本をとるときに画仙紙が動いてしまうと拓影がずれてしまうため、対象物より大きめの紙を用い、動かないように裏側へ巻き込みます。その後、霧吹きで水を吹きかけることにより、対象物と紙との間の空気を抜き、さらに密着させてから、タンポで墨打ちを行います。この墨打ちを行う時に、貨幣などの小さい遺物だと、持ちにくくけっこう打ちにくかったりします。そこで登場するのが製図用テンプレートです。
製図用テンプレートとは、設計や製図に用いられる道具で、型抜きされた樹脂製の薄いプレートになっています。この型抜きの内側に沿って鉛筆などでなぞっていくことで、その形を早く正確に描くことができます。写真1のような円形や方形・三角形などの図形以外にもローマ字、数字などもあります。

写真2 目から鱗の使い方!
写真2 目から鱗の使い方!

どのように使うかというと、拓本をとりたい貨幣の上にひと回り大きい画仙紙を被せます。その上から貨幣のサイズに見合った円形を選び、このテンプレートを置きます。この時に大事なのは、テンプレートで画仙紙の端を抑え込むことです。あとは同じです。水を吹きかけた後、タンポで墨打ちをするだけです。画仙紙を貨幣の裏側へ巻き込む必要もなく、手で持たなくてもよく、画仙紙がずれることもない、まさに一石三鳥の裏ワザです。
実を言うと、このテンプレートを使った拓本のとり方を知ったのはごく最近のことです。
ある補助員さんが円形のテンプレートを探していて、何をするんだろうと思っていたところ、その後に貨幣の拓本に使っているところを目撃し、「こんな方法があるんだ」と目からウロコが落ちる思いでした。と同時に下心も…。そうです。いつもこのシリーズで何を書こうか探している身にとっては非常にありがたいネタだったのです。原稿の締め切りが一月後にせまるなかの偶然の目撃、すかさず写真を撮り、ネタとさせていただきました。
今後、間違いなく逸品となる品です。(内田保之)

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