記事を探す
緑色凝灰岩製の管玉関連遺物

オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品138 緑色のきれいな石 ‐金森西遺跡出土の管玉未製品‐

守山市
緑色凝灰岩製の管玉関連遺物
緑色凝灰岩製の管玉関連遺物

平成25年度の秋で現地調査を終了した守山市金森西遺跡の調査は、土器をはじめとする出土した遺物と現場で記録した図面や写真とともに、場所を安土城考古博物館内にある調査整理課に移して、整理調査を現在すすめています。今回は,金森西遺跡の調査で大きな成果となった、古墳時代の玉作りにかかわる遺物をご紹介します。
金森西遺跡は、調査の結果,網の目のように流れる小河川の間に、竪穴住居や掘立柱建物からなる集落が点々と営まれていたことが明らかとなりました。これらの集落は古墳時代前期に活動の中心時期があったようです。約20m×600mという細長い調査区の中を縦横無尽に横切る小河川からは、多量の土器片に混じって、勾玉や管玉、有孔円板といった玉や小型の石製品がチラホラと出土していました。ところが、ある調査区の小河川の土の中から、きれいな緑色をした1cmにも満たない小さな石の破片が出てきました。それからも,決してまとまってというわけではありませんが、周辺からパラパラと緑色の石の破片が出土し、その数を増やしていきました。出土当初、未熟な私は「ん?何これ?・・・でもきっと重要なものかも?」と、これが何なのかよくわかっていませんでしたが、打ち割ったような破片や角柱状の破片も見つかったため、ようやく管玉の未製品であることが理解できました。これまでに展示品や写真などで少なからず製作途中段階の玉類も目にしていたはずですが、体力が自慢の私の頭の中には留まっていてくれなかったようです。

滑石製品
滑石製品

さて、この「緑色のきれいな石」の正体は「緑色凝灰岩(りょくしょくぎょうかいがん)」という石材で、日本海沿岸地域で産出されますが、滋賀県では産出されない石材です。結果的に古墳時代の金森西遺跡では、「緑色凝灰岩」製の管玉と、「滑石(かっせき)」という石材で作られた管玉・臼玉・有孔円板を製作していたことがわかりました。遺構の土は黒褐色の粘土質であったため、きれいな緑色をした緑色凝灰岩は非常によく目立ち、掘削を行っていた作業員さんや調査補助員さんたちも、わずか数ミリ程度の小さな破片まで取り上げてくれました。そのおかげもあって緑色凝灰岩製の管玉は、素材から完成品までの各段階の遺物がみつかったので,製作工程を復元することができそうです。
金森西遺跡の玉作りにはどのような技法や特徴があるのか?滋賀県では産出しない石材を用いてここで作っている意味は?といった、次々と浮かび上がってくる疑問や課題を念頭に置きつつ、今日も整理調査を進めています。

滑石製品の未製品
滑石製品の未製品

金森西遺跡の詳細な内容や実際の遺物については、来たる8月3日(日)に安土城考古博物館内調査整理課で開催されます、「あの遺跡は今Part19‐古代の知恵と技‐」で中間報告会や遺物展示を行います。この他、現在整理調査を行っている各遺跡の紹介や展示も行いますので、ぜひともお越しください。多くの方々の来場をお待ちしています!
(小林裕季)

Page Top