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オススメの逸品

調査員オススメの逸品 第213回 世界遺産級食材「琵琶湖八珍」

近江八幡市その他

筆者が安土城考古博物館に在籍している時、博物館周辺で活動をしている方々や、琵琶湖に関連する企業の方々と語らい、食を通して琵琶湖の魅力を発信するために「琵琶湖八珍」なるブランドを提案しました。
「琵琶湖八珍」とは、食材として利用される琵琶湖にしか居ない魚、もしくは、琵琶湖独特の料理に使われる食材としての魚介を八種選んだものです。何故「八珍」?先行する食材魚のブランドとして「宍道湖七珍」がありますが、宍道湖よりも琵琶湖が大きいので一つ上の八(未だに松江市からのクレームはありません)、近江八景の八、末広がりの八、∞を縦にすれば8で八と、様々な意味を込めて八にしました。

ビワマス
絶品の湖魚 ビワマス
琵琶湖八珍の魚達
琵琶湖八珍の魚達

選んだ魚を紹介します。ビワマス(固有種で、世界のサケ科の仲間で一番美味)、コアユ(準固有種で、琵琶湖で一番漁獲されている大きくなれないアユ。稚魚は琵琶湖のダイヤ砥呼ばれるヒウオ)、ニゴロブナ(固有種で、御存知フナズシの材料)、ホンモロコ(固有種で、世界のコイ科の仲間で一番美味)、ハス(準固有種で、コイ科で唯一の魚食魚。淡泊な旨味が持ち味)、イサザ(固有種で、湖底に潜む冬の美味)、ビワヨシノボリ[ゴリ](固有種で、湖底に潜む夏の美味)、スジエビ(在来種だが、琵琶湖のソールフードエビ豆の材料)の八種類です。スジエビだけが在来種ですが、他は琵琶湖にしか棲息しない固有種若しくは準固有種(生物学的にはこの様な表現はありませんが、固いことを言うと面白くなくなるので)です。
「おや?琵琶湖の魚料理(以下「湖魚料理」)の代表格であるウナギ・コイ・シジミが選ばれていないやないか!」という声が聞こえてきそうです。これには訳があります。確かに湖魚料理の代表とも言えるウナギ・コイ・シジミですが、料理店に出回っているこれらの食材の殆どは、県外産若しくは養殖なのです。従って、琵琶湖のブランド「琵琶湖八珍」としてアピールすると「何で●●産のウナギが琵琶湖八珍なんや!」というクレームが付くことが十分に予想されたため、産地のグレーな魚介は、涙を呑んで琵琶湖八珍の裏側で活躍して頂くことにしました。
何故琵琶湖八珍を提案したのか?無論、湖魚をブランド化し、琵琶湖の魅力を発信したいという気持ちはありますが、私の想いとしては、単なる漁業振興、観光振興を目指したわけではありません。本当の想いは、湖魚を食べることによってなるべく多くの人達に琵琶湖に対する当事者になって頂きたい。というところにあります。今の琵琶湖は決して健全な状態にあるとは言えません。この琵琶湖に私たちは「飲み水」を通して命を預けています。もし、琵琶湖にとんでもない異変が生じたら、私たちは死んでしまうかも知れません。こんな危うい状況にあるにもかかわらず、多くの人達は琵琶湖に対して無関心です。何故?文明の発達は、琵琶湖という自然の持つ力を見えにくくしてしまいました。本当は琵琶湖という自然に頼って生きている、ちっぽけな生き物の人間なのに、その事を自覚できなくなってきています。このまま琵琶湖と人間との関係が乖離し続けると、琵琶湖の生じた異変にも鈍感になってしまいそうです。「大変やけど、まー何とかなるやろ。誰かが何とかしてくれるやろ。」これではいけない。私達がもっと琵琶湖の対する当事者になり、琵琶湖の異変に対して敏感でなければならない。という想いから思いついたのが、湖魚を食べるという文化を広めることです。

名著「琵琶湖八珍-湖魚の宴絶品メニュー」
「琵琶湖八珍-湖魚の宴絶品メニュー」(編集者も愛読)

湖魚料理の素材の殆どが野生動物です。ということは、彼らが棲めない琵琶湖になってしまったら、我々は湖魚料理を食べることが出来なくなる、とうことです。しかも、その野生動物の命を涵養している琵琶湖の水を、我々も同じように飲んでいるという事実があります。この事に気付くことが、我々が琵琶湖に対する当事者になる一つの方法ではないでしょうか。
湖魚を食べる。旨い。もっと食べたい。その時、琵琶湖に魚が居なければ・・・・。よし、それでは魚が元気よく泳ぐ琵琶湖にしよう。琵琶湖に魚が増えた。おや?最近琵琶湖の水が旨いぞ!・・・。こんな、琵琶湖と私達人間を含めた生き物達の命が、正のスパイラルを生むことを願い、提案したのが「琵琶湖八珍」です。
そして、この想いを伝えたく上梓したのが、日本国民必読の書として注目されている(笑)「琵琶湖八珍-湖魚の宴絶品メニュー」という本です。この本は、琵琶湖八珍を楽しむことに主眼を置いて執筆しました。よって、270種ほどの湖魚料理の画像をカラーで掲載しました。勿論、全て私が楽しみながら頂いた料理です。さらに、私は酒飲みですので、紹介した料理にどの様なお酒が合うのかも記載しました。まさに身を削り、財布を削り、結果として身を太らせた奇跡の著です。この本を読み(買って下さい)、琵琶湖八珍を楽しみ、そして琵琶湖と生き物たち(人間を含む)との関係に思いを馳せて下さい。そうすればあなたは、とても幸せになれます。私が保証します。
大沼芳幸

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