記事を探す

オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.56 土器観察の必需品-ペンライト

その他

土器をはじめ、さまざまな遺物を詳細に観察することは、考古学の基本中の基本です。だから、考古学を学ぶ者にとって「モノが見られない(=観察できない)」といわれることは、かなり致命的です。

ペンライト
ペンライト

研究会やあるいは博物館の展示会場で、考古学者は小さな土器片をあきることなく、それこそ何時間も見続けることができます。その姿は、多くの方々にとっては、ただただ変な人たちに見えるにちがいありません。
考古学者が小さな土器のかけらをなめるように見るのは、土器の破片に残されたさまざまな痕跡を読み取り、頭の中でそれらの痕跡を土器の製作工程のなかに位置づけすること、つまり、土器作りの過程を復元しているからです。あるいはまた、土器の文様の配置や施し方などを観察し、他の事例と頭の中で比較しながら、その土器の時間的な位置づけ、他地域との交流関係、さらには土器作りの具体的工程を考えているからでもあります。土器のかけらからどれだけ情報を引き出すことができるのか、そこに考古学者は挑み続けています。
土器を観察し、そこから少しでも多くの情報を引き出すには、さまざまな方法がありますが、何よりも見にくい痕跡を見えるようにすることが必要になります。そこで考古学者が使っているのがペンライトです。私も以前は、豆電球のペンライトを使っていたのですが、最近はLEDの製品を愛用しています。何より明るいこと、そして球切れの心配が少ないことが利点です。

ペンライトの使用例
ペンライトの使用例

ペンライトの光を土器片に斜めからあてると、陰影がつくので器面の細かな凹凸が浮かび上がってきます。器面を調整した工具のかすかな痕跡、工具の動きによって移動した砂粒、指のナデのつなぎ目、あるいは土器を作っていたとき、偶然付いた指紋等など。こうした痕跡を記録し、他の要素もつなぎ合わせながら、土器作りの実態を解明していきます。ある意味で、この過程は土器片との対話といえるかもしれません。

(辻川 哲朗)

Page Top