新近江名所図会
新近江名所圖会 第166回 安土町の湧水
その土地の人々の暮らしや地域の歴史と個性とが凝縮された景観に対して保護と継承を図る「重要文化的景観」。滋賀県では、平成25年(2013)4月時点で「近江八幡の水郷」「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」「高島市針江・霜降の水辺景観」という、いずれも「水」に関わる3か所が指定されています。
もちろん、滋賀県にはこれ以外にも多くの「水に関わる、人々の暮らしに密着した景観」が存在します。そのうちの1つが「湧水地」です。暮らしを支える生活用水として大切にされてきた湧水地は県内にたくさんありますが、今回は近江八幡市安土町常楽寺にあり、JR安土駅から歩いて気軽に見にいくことができる湧水地をご紹介します。
おすすめPoint
北川(喜多川)湧水
現在でも野菜洗いなど町内の生活水として使われていて、湧出した水は常浜に注いでいます。円満地蔵尊の横から湧き出ていて、足湯ならぬ足涌(あしゆ)が設置されていて、地元住民の憩いの場にもなっています。水温が一定に保たれているので、冬場は水が温かく感じ、寒い日には湯気が立つほどだとか。夏にはスイカや野菜を冷やすのにも使われ、子供たちの水遊び場となっています。
音堂川(おとんどがわ)湧水
この一帯には清水が流れ、「梅の川」と称される場所では、現在は水脈が途絶えているそうですが、耳を澄ますと水が湧いているような音が聞こえます。梅の川には信長の家臣・武井夕庵が、茶の湯用の水を汲みに来ていたという伝承が残っています。難波より求めてきた珍茶をここの水で入れたところ、信長が非常に喜び、その後の茶の湯には常に使用したと伝えられています。
周辺のおすすめ情報
繖山の古刹「観音正寺」(安土町石寺)は、平成5年の火災で本堂が焼失してしまいまいした。平成16年に再建されましたが、その際に本堂の真下から豊富な地下水が湧出し、水に不自由していた寺は水に恵まれるようになりました。そのいきさつから、檀家から「慈悲の霊水」と崇められ、現在は境内の手水舎に引かれて参拝者に振舞われています。
また、旧近江八幡市街にも、浅小井町湧水(浅小井町)・若宮湧水(金剛寺町)・野田町湧水(野田町)・大江水など、いくつかの湧水地があります。これらにもぜひ足を運んでみてください。
アクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線安土駅下車 西へ徒歩10分~20分
【自家用車】名神高速道路竜王IC下車20分(湧水地には車では近づけません。JR安土駅南側にある有料駐車場などをご利用ください)
(阿刀弘史)
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