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新近江名所図会

新近江名所圖会 第6回 佐久奈度神社(さくなどじんじゃ)

大津市
大津市大石中町
佐久奈度神社
佐久奈度神社

大津市南部、瀬田川の景勝地である鹿跳橋(ししとびばし)を渡って、右手の高台にあるのが佐久奈度神社です。神道は「祓いに始まり、祓いに終わる」と言われますが、その祓いと禊ぎをつかさどる祓戸の大神を祭る総本宮がこの佐久奈度神社です。669(天智天皇8)年に天皇の勅願により中臣朝金連(かねのむらじ)がこの地に社殿を造り、「祓戸大神三神」を祭ったのが始まりと伝えられています。
古の人々は瀬田川の激流があらゆる罪や穢れを乗せて、流し去ってくれる場所として考えていたようです。そのため、皇室や武家の崇敬が篤く、天皇の厄災を祓い、都を守護する「七瀬(ななせ)の祓所」の1つとされ、平安時代より唐崎神社(大津市唐崎)と共に、盛大な祭祀が行われ、名所としての賑わいを見せるようになります。また、古来より、伊勢神宮に参拝するには、まず当社で禊ぎをするのが慣わしとされ、大石の語源も「忌伊勢(おいせ:伊勢詣での祓所の意)」が訛ったものとされています。
祓いの行事は現在も行われおり、特に、7月31日の「御手洗祭(みたらしさい)」では、「人形(ひとがた)の祓い」と「茅(ち)の輪くぐり」が行われ、多くの参拝者で賑わいます。
社殿はかつて川畔にありましたが、天ヶ瀬ダム建設によって、やむなく社殿を高台に移動し、現在に至っています。

おすすめPoint

瀬田川の美しい景観
瀬田川の美しい景観

佐久奈度神社のおすすめPointは、「ご祭神」と「景観」です。当社では、「瀬織津姫尊(せおりつひめのみこと:川の神)」・「速秋津姫尊(はやしあきつひめのみこと:海の神)」・「気吹戸主尊(いぶきどぬしのみこと:風【息吹】の神)」・「速佐須良姫尊(はやさすらのみこと:地底【霊界】の神)」の「祓戸の大神四神」が祭られています。個人や社会の禍事(まがごと)罪、穢れを祓う「祓い」と「禊ぎ」をつかさどる神々です。この四神が揃って祭られているのは、全国で唯一、当社だけです。そのため、最近はパワースポットとして注目され、全国から若い参拝者が訪れています。
神に対する信仰や敬意、そして、山々と瀬田川の急流が織りなす美しい景観は、今も昔もこの地に人々を惹きつけてやまないのかもしれません。

周辺のおすすめ情報

立木観音
立木観音

佐久奈度神社の近くには、「厄除けの立木の観音さん」として親しまれる「立木観音」(立木山安養寺、浄土宗)があります。京阪バス「立木観音前」バス停脇の登り口から、約700段の急な石段をのぼると本堂があります。毎月17日の縁日には、多くの参詣者で賑わいます。815(弘仁6)年、弘法大師空海が、42歳の厄年に諸国を行脚中、立木山で霊木を見つけ、観世音菩薩像を刻んだのが立木観音の始まりとされています。
この立木観音の石段は、心が折れそうになるほど登るのがきついです。私は登り終えるのに約20分かかりました。運動不足な現代人にお勧めのスポットです。

アクセス

【公共交通機関】JR東海道本線(びわこ線)石山駅より 京阪バス 大石行き20分「大石小前」下車
JR湖西線和邇駅下車徒歩20分
【車】 国道422号で鹿跳橋を渡った後大石東6丁目交差点を右折、駐車場あり


より大きな地図で 新近江名所図絵 第1回~第50回 を表示

(具志堅 有紀)

<参考文献>
『近江湖物語一 水の浄土琵琶湖』滋賀県教育委員会・公益財団法人滋賀県文化財保護協会 2007

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