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新近江名所図会

新近江名所圖会 第7回 唐崎神社-夏越の祓え-

大津市
大津市唐崎1丁目
唐崎神社
唐崎神社

6月は梅雨の季節であるといわれています。連日の雨模様と共に、夏に向かっての気温の上昇が重なって、じめじめとしたうっとうしい気分の日々を過ごさなくてはなりません。現代なら、エアコンの効いた部屋や店で快適に過ごせますが、そんなもののない時代の人達はどうしていたのでしょうか?また、冷蔵庫もなく氷などめったに手に入らない時代の人達は、食べるものが腐りやすいこの時期をどのようにして乗り切ったのでしょうか?
閑話休題‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
昔の人々は罪を犯したり、病気になったり、災いがおこったりしたときには、穢れが発生したと考えました。この穢れはそのままではどんどん増殖して広がっていきますので、素早く消滅させなければなりません。穢れを消滅させる行為を祓えと呼びます。古代においては、天皇が国中の穢れを祓い清めることを目的として、大祓えの儀式を行いました。この儀式がやがて毎年6月と12月の晦日(30日)に行われる大祓えとして制度化されていきました。『日本書紀』天武天皇五年(676年)8月条に、四方に大解祓(おおはらえ)をさせたとあり、その10年後にも諸国大解祓の記事が見えることから、これらがもととなって『大宝令』以降に制度化したものと考えられています。
平安時代には、京域内の七ヵ所で人形(ひとがた)などを水に流した祓えを行い、七瀬(ななせ)の祓えと呼ばれました。11世紀頃には洛外(平安京の外)に祓えの地が広がり、やがて河川など水際で祓えを行うようになりました。その場所の一つに近江国の辛(今の唐崎神社のあたり)があります。
唐崎神社は琵琶湖の西岸、大津市唐崎に鎮座する神社です。江戸時代には近江八景の一つに数えられるほどの名所で、歌川広重の「唐崎夜雨(からさきのやう)」で有名です。神社の境内には広重の版画に見られる「唐崎の松」として親しまれている大きな松が枝を八方に広げています。最初の松は持統天皇の頃(697年)に植えられたと伝えられ、現在の松は三代目で樹齢150年~200年といわれています。唐崎神社の夏越の祓えは「夏越の御手洗(みたらし)祭」と呼ばれ、毎年7月28・29日の2日間行われます。茅の輪をくぐって身を清める神事が行われ、観光客などで賑わいます。

おすすめPoint

唐崎の松(3代目)
唐崎の松(3代目)

境内に入って、唐崎の松の広がった枝振りを鑑賞して下さい。本当は琵琶湖からの眺めが広重の版画を彷彿とさせて良いのですが、船に乗らないと見られません。そこで、境内の周囲から松を見ることをおすすめします。現在の松は三代目なので広重の版画のように湖中に張り出した枝とそれを支えるたくさんの柱は残念ながら存在しませんが、かつての支柱を乗せた石がその名残として地面に残っています。それらを繋ぎ合せながらかつての枝の広がりを想像することができます。
どうしても広重の版画の光景を見たいと言われるかたは、以下に紹介する「みたらし団子」のお店に行ってください。二代目の松は大正10年(1921年)に枯死しましたが、その5年後に松と神社を紹介した新聞記事が写真付きで載せられています。それは、まさしく広重が描いた「近江八景 唐崎夜雨」の松そのものの光景です。

周辺のおすすめ情報

唐崎神社の「御手洗祭」は、厄払いを祈願する琵琶湖上でのお焚き上げや、手筒花火の奉納など様々な神事や行事が行われます。唐崎神社の神事にちなんでで名付けられたとも言われている「みたらし団子」は、通常は神社の入口の真向かいにある店舗で販売されています。「みたらし祭」の2日間は境内にテントを張って売られています。
祭の賑わいを感じながら食べる「みたらし団子」もいいものですが、私のおすすめは祭のない時の静寂に包まれて食べる「みたらし団子」もまた格別な味がすると思います。

アクセス

【公共交通機関】JR湖西線唐崎駅より徒歩15分。京阪石坂線浜大津駅から江若バス堅田行き15分「唐崎」下車すぐ
【車】 大津から湖周道路堅田方面へ唐崎1丁目南交差点を過ぎて、すぐ右手(湖岸)、駐車場あり


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(三宅 弘)

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