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新近江名所図会

新近江名所圖会 第205回 静寂にたたずむ江戸の名残-大庄屋諏訪家屋敷

守山市
写真1 表門へ向かう道
写真1 表門へ向かう道
写真2 堂々たる主屋
写真2 堂々たる主屋
写真3 庭園
写真3 庭園
写真4 笑顔の福島さん
写真4 笑顔の福島さん

中山道を中心に、今日もますます発展を続けている守山市。現在では守山駅周辺が中心となっていますが、かつてこの地域の中心は、中山道と湖岸の赤野井港を結ぶ交通の要衝であった赤野井だったといわれています。そして現在、赤野井町の閑静な集落の中心部に、悠然とたたずんでいるのが、市指定文化財史跡の大庄屋諏訪家屋敷です。
大庄屋諏訪家屋敷は江戸時代の建物といわれています。当主諏訪家の歴史はさらに古く、応仁の乱後の延徳3(1491)年、諏訪左近将監長春(すわさこんしょうげんおさはる)が当地に入り、現在の諏訪家の祖になったと伝えられています。以降、諏訪家は地域一帯の有力者として、江戸時代には庄屋取締役である「大庄屋」として農民の指導を行なってきたといいます。大庄屋諏訪家屋敷の敷地は約四千平方メートル。広大な敷地はまさに諏訪家がこの地域の指導的立場にあったことを示すものなのでしょう。
やわらかな木漏れ日を受けながら表門をくぐり、手入れの行き届いた前庭に目を遣りながら歩を進めると(写真1)、悠々たる構えの主屋(写真2)と書院が立ち並びます。この2棟は、江戸時代後期―文化年間(1804~1818年)の建物と想定されています。客人を迎える書院からは、小堀遠州作ともいわれる枯山水、琵琶湖形の池を配置した池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)の庭園を臨むことができます(写真3)。かつて、諏訪家へ訪れた多くの客人たちは、静寂の中、自然の奏でる美しい音色に思いを馳せていたのでしょう。
大庄屋諏訪家屋敷は、平成26年10月に諏訪家当主から守山市に寄付され、現在は守山市が維持管理を行なっています。そこで、現在屋敷の整備を担当されている市文化財保護課の福島さんに、諏訪家屋敷への想いと今後の展望をうかがいました。
「大庄屋諏訪家屋敷の魅力は、なんといっても古き良き日本の原風景を体感できることでしょう。そんな郷愁の念に魅せられて、これまでにも多くの方々がお越しになっています。今後は、訪れる方々に地域の歴史を知っていただくとともに、農村文化を体験できるような催し物も企画しています。守山市の歴史・文化遺産として、多くの方々に気軽に楽しんでいただければと考えています。もし、諏訪家屋敷について少しでも興味を持っていただけたら、気軽にお問い合わせください。僕が、楽しく屋敷の魅力についてガイドさせていただきます。」
はじけんばかりの素敵な笑顔(写真4)でご対応いただいた福島さんのガイドも、大庄屋諏訪家屋敷の魅力のひとつかもしれません。
◆イベント案内
【大庄屋諏訪家屋敷まつり】
平成27年10月31日(土)午前10時~午後3時
平成27年11月1日(日)午前10時~午後2時
◆注意
特別公開などのイベント期間以外は屋敷の外観のみの見学となります。書院や庭園などの見学を希望される場合は、事前に市教育委員会文化財保護課(077-582-1156)までお問い合わせください。(車で来場の方は、お問い合わせの際に近隣施設に駐車場を斡旋してくださいます。)
◆アクセス
JR守山駅から近江バス「小浜」もしくは「あやめ浜」行きに乗車、「赤野井別院前」で下車。バス停より徒歩5分。車でご来場の方は、名神栗東ICから約40分。琵琶湖大橋から約20分。

◆周辺のおすすめポイント
かつて赤野井の地では、本願寺第3代覚如の長男存覚が草庵を構え、さかんに念仏布教を行なっていたといいます。また、織田信長と本願寺との間で起こった激しい戦いの中で、野洲・栗太の門徒が各拠点で奮戦する中、赤野井はその背後を固める重要な役割を担っていたといわれています。
このように、古くから浄土真宗と深い関わりを持つ赤野井には、現在でも東西両本願寺の別院をはじめとして、寺院や言い伝えなどが数多く遺されています。江戸時代の名残を感じながら、真宗関連の史跡を散策してみるのも楽しいかもしれません。
(木下義信)

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