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新近江名所図会

新近江名所圖會 第373回 遺跡めぐりの強いミカタ―遺跡説明版その3(大津市月輪3丁目)―

大津市

前回、このコーナーで、遺跡説明板その1とその2を掲載してから5年弱がたちました。その1では大津市瀬田地区にある近江国府を新近江名所圖會第251回目に、その2では草津市・栗東市編として複数の遺跡の説明板について第252回目に紹介しました。今回は、ひさびさとなる第3弾として大津市瀬田地区にある月輪南流(つきのわなんる)遺跡の説明板を紹介します。

写真1 月輪南流遺跡の説明板
写真1 月輪南流遺跡の説明板


 大津市瀬田地区から草津市南部に延びる瀬田丘陵上からその裾部には、飛鳥時代から奈良時代にかけては一大コンビナートと言えるような大工業地帯でした。大津市源内峠(げんないとうげ)遺跡や草津市野路小野山(のじおのやま)遺跡では製鉄、草津市から大津市にまたがる笠山遺跡では当時の食器である須恵器を焼き、大津市山ノ神遺跡では須恵器を焼くとともにお寺の屋根に乗せられた鴟尾(しび)もここで作られていました。また、現在立命館大学のキャンパスとなっている草津市木瓜原(ぼけわら)遺跡では、製鉄とともに須恵器を焼いた窯もみつかっています。これらはメジャーどころとも言えるような代表的な遺跡ですが、それ以外にも多くの生産遺跡(金属、陶磁器、瓦等を製造していた遺跡)のあることが知られています。
 今回紹介する月輪南流遺跡もそんな遺跡の1つです。
 発掘調査は過去に数度行われているようで、須恵器を焼いた窯や燃料となる木炭を焼いた窯などが見つかっているほか、製鉄にともなってできるゴミである鉄滓(てっさい)なども多量に出土しているそうです。まだ見つかっていませんが、すぐ近くに製鉄炉などがあったのかもしれません。
おすすめPoint
 この月輪南流遺跡についての説明板が今回の紹介になります。(写真1)(写真2)場所は大津市月輪三丁目、国道1号から滋賀医大へ抜ける道路を京滋バイパスがまたぐ角にあります。設置者は大津市教育委員会と大津市瀬田東文化振興会で、ネットフェンスに取り付けられ、地図や写真などもついてカラフルなものとなっています。以前紹介したものはいずれも文字だけでちょっと地味なものでしたが、これは新しいということもあってQRコードもついてかなりの進歩がみられます。ちなみにこのQRコードを試してみたら、YouTubeにある月輪南流遺跡を解説する動画に接続されました。たんなる遺跡の説明板ですが、時代とともにかなり進化しているようです。そのうちスマホをかざすと、3Dで映像が飛び出してきたり、VRの映像を見ることができるとか、そんなものも特別な遺跡とかでもなく、街角にあるこのような説明板でも現れるかもしれませんね。

写真2 月輪南流遺跡説明板はこんなところに設置されていました。
写真2 月輪南流遺跡説明板はこんなところに設置されていました。


周辺のおすすめ情報
 京滋バイパスの側道を草津側へ160mほど行ったところを右に曲がり約120m進むと「Saas-Fee(サースフェー)」というパン屋さんがあります。小さなお店ですが、なかなか評判のお店です。埋蔵文化財センターの中で、発掘調査で出てきた土器や図面などを整理してくれている調査補助員さん達も月に一度、「ナンの日」と称してこの店でナンを仕入れ、昼食にカレーを食べています。カレーは各自持ってきているみたいで、その日の昼過ぎの整理室はカレーの匂いが漂っています。私はこれには参加していませんが、Saas-Feeさんでは時々昼食用のパンを買ったりしています。月に一度の「ナンの日」、NHKさん、「サラメシ」の取材に来ませんか。
アクセス
月輪南流遺跡までは瀬田駅から帝産湖南バスで「びわ湖レストタウン」方面行き「バイパス一里山」下車、徒歩約2分。駐車場はありません。または瀬田駅より徒歩約20分。
(内田保之)

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