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調査員のおすすめの逸品№389 築城450年!安土城考古博物館 特別展「安土山築城前夜」出陳のイッピン

近江八幡市

 安土築城開始から450年を数える令和8年(2026年)。この春、滋賀県立安土城考古博物館では、特別展「安土山築城前夜 戦国乱世の城」を開催します。

 展示のテーマはタイトル通り、安土城の「前夜」です。織田信長が築いた安土城は、近世の城の要素を初めて備えた、新たな時代の始まりの城として、日本城郭史上、高く評価されてきました。では信長は、なぜそんなにも画期的な城を築けたのか?本展ではその理由を「安土城以前」の城から探り、改めて安土城の魅力に迫ります。

 そんな本展の見どころのひとつは、各地の城跡から発見された、多彩で魅力的な資料です。今回は、展示品のうち特にご注目いただきたい資料を2点、ご紹介します。

武将に愛された唐物(からもの)(からもの)の茶道具

 まずは、伊勢国司を務めた北畠氏の居館跡(国指定史跡「北畠氏館跡」、三重県津市)に伝わる青磁(せいじ)水鳥形(みずどりがた)香合(こうごう)(北畠神社蔵)です(写真1)。青磁は、透明がかった淡い青緑の肌色が特徴の美しい焼き物です。香合とは、茶の湯で用いる香を入れる(ふた)付きの器で、本品は高さ20cmを超える大型の作例です。大型の青磁製品は、権力者の居所でしばしば出土しますが、水鳥形香合の出土は全国的にも珍しく、戦国時代の武家の生活を考える上で貴重な資料と言えます。

写真1 北畠氏館跡出土 青磁水鳥形香合(北畠神社蔵)

 平安時代から室町時代にかけて、中国から舶載された陶磁器や絵画、工芸品は「唐物(からもの)」と呼ばれて珍重されました。室町幕府第3代将軍・足利義満の北山殿北御所(鹿苑寺)や、8代将軍・義政の東山殿(慈照寺)がよく知られるように、将軍の邸宅や有力な武家・寺院には、政治的かつ文化的な交流の場として「会所(かいしょ)」が設けられ、唐物は座敷飾りや茶の湯の道具として愛玩(あいがん)されました。本品のような青磁や、胡銅(銅に(すず)や鉛を混ぜた合金)製の器物は、その代表的なものです。

 北畠氏は、南北朝時代から戦国時代までこの地に本拠を置いた戦国大名で、館の南部には広大な庭園(国指定名勝「北畠氏館跡庭園」)を造成しました(写真2)。館の周辺からは、15世紀の石垣が検出されており、戦国時代のかなり古い時期の構築例として注目されます。

写真2 国指定名勝 北畠氏館跡庭園

 本品は、北畠氏の館で用いられた座敷飾りだったのでしょう。背中や瞳の周りに見られる羽毛の表現や、美しい青磁の色味、全面に生じた貫入(かんにゅう)釉薬(ゆうやく)胎土(たいど)の収縮の差によって生じた細かいひび割れ)など、見どころの多い逸品(いっぴん)です。

展示初公開!!石でできた鬼瓦(おにがわら)

 2点目は、小谷城(滋賀県長浜市)麓から出土した「(いし)(おに)」(小谷寺蔵)です(写真3)。

写真3 石鬼(小谷寺蔵)

 小谷城は、近江守護・京極氏の家臣から戦国大名となり、北近江に勢力を持った浅井氏の拠点として知られます。浅井氏と言えば、越前朝倉氏と同盟を組んで信長と対立したことで有名ですが、ご紹介する「石鬼」は、そんな朝倉氏との関係をうかがわせる資料です。

 小谷城をめぐる研究では、近年、城内から大量の「(しゃく)(だに)(いし)」製品が発見されたことが再評価されています。笏谷石とは、福井県福井市の足羽山(あすわやま)周辺で採れる石材(凝灰岩(ぎょうかいがん))のこと。水に濡れると深い青色に見えることから「青石」とも呼ばれます。緻密(ちみつ)で軟らかく良質な石材として、石棺、仏塔や仏像、狛犬などに利用されてきました。小谷城からは、鉢や(うす)、バンドコ(行火(あんか))などの生活用品が見つかっています。特に注目されるのは、写真の「石鬼」です。

 これは、浅井氏の祈願寺である小谷寺の境内で見つかったもので、もとは寺内の建物か、城内最奥の山王丸にあった小谷神社(現在は小谷寺境内)の(むね)部分を装飾していた建築部材だったのではないかと推測されます。

 棟とは、屋根の面が合わさって山折りになった頂上の部分をいいます。つなぎ目には雨漏り防止や耐久性の向上のため補強をしますが、本品は、そうした部材に装飾性をともなったものです。側面の形状から、寺社建築などに見られる「箱棟(はこむね)」という形状の棟に使われたと考えられます。

 戦国時代において笏谷石は、越前国を治めた朝倉氏が独占的に管理しており、同氏と友好な勢力にのみ流通していたようです。笏谷石あるところに、越前朝倉氏あり。小谷城の多種多様な笏谷石製品は、浅井氏と朝倉氏の緊密な関係を示す物的証拠と言えます。

 ちなみに、安土城跡でも伝本丸跡で笏谷石の容器(写真4)が出土しています(新近江名所図会 第263回「安土の笏谷石タイル」)。天主へ上る階段にも笏谷石の切石が敷かれており、これらも越前朝倉氏との関係によるものと考えられます。

写真4 安土城伝本丸跡出土 笏谷石製容器(当館第2常設展示室にて展示中)

 さて、今回の特別展では、安土城はもちろん、観音寺城、水茎岡山城、小谷城、坂本城(以上滋賀県)、大桑城(岐阜県山県市)、飯盛城(大阪府大東市・同四條畷市)、勝龍寺城(京都府長岡京市)、また一乗谷城(福井市)や北畠氏居館(三重県津市)、勝瑞城館(徳島県板野郡藍住町)と、県内外の名だたる城や城主の居館、城下町についての発掘調査成果をご紹介します。

 展示を見終わればきっと、改めてそれぞれの城に足を運んでみたくなることでしょう。もう行った方も、まだこれからという方も、まずはぜひ本展をご覧いただき、春のお城巡りに備えていただけたらと思います。

(学芸課 瓜生 翠)

〈展覧会情報〉※詳しくは当館WEBサイトをご覧ください

令和8年度春季特別展・安土城築城450年記念「安土山築城前夜 戦国乱世の城」

開催期間:2026年4月25日(土)~6月14日(日)

▼こちらのミニ企画展でも、笏谷石製品が見られます

特別陳列Ⅰ「秀吉の城 小谷城」

開催期間:2026年4月7日(火)~23日(木)

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