オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品 No.120 「厄除」で厄はよけられるか? ―彦根市多景島遺跡の「厄除」かわらけ―
今回は厄除けのお話をしましょう。
みなさんは厄除けをしたことがありますか? 厄除けとは、身の上によくないことが起こったときに神社などでお祓いを受けたりすることです。神社に行くと、「今年の厄年」と書かれた看板が立てられています。数え年でその年齢になる方はその神社で厄祓いをして下さい、という神社の宣伝みたいなものを見たことがある方も多いと思います。厄年を中心に前後3年間は、体調面も含めてよくないことが起きるので気をつけようということなのでしょう。
「厄除」のかわらけ投げは、京都市高尾の神護寺から広まったそうです。神護寺で宴会が行われていたとき、たわむれに土師器皿を投げたのが最初だと言われています。その後、厄除けの意味合いが強くなり、土器に名前などを書いて投げたり、願い事を唱えて投げたりしました。そして、的に当たるとか輪をくぐるとかすれば願いがかなう、というように変化していきました。今では、琵琶湖の竹生島では2枚の皿に住所と名前を書いて鳥居をくぐるように投げたり、京都府宮津市天橋立の成相寺では的になる輪をくぐらせるように投げたりしていて、くぐれば願いがかなうとされているようです。いずれにしても、かわらけ投げが高所から皿を投げる行為であることは、昔から変わっていません。
そんなかわらけ投げに使われたと思われる皿が、彦根市多景島遺跡で見つかっています。多景島の周囲は切り立った崖で、船が接岸できるような場所はありません。そのような岸壁近くの湖底から、たくさんの土器とともに、土師器の小さな皿に「厄除」の文字が陰刻されたものが、全部で10枚近く見つかっています。この皿は、その特徴からおそらく戦後に作られたものと思われ、島の岸壁から琵琶湖へ向かって願いを込めてかわらけを投げている光景が浮かびます。彼らの願いはかなったのでしょうか。多景島は祈りの島と言われ、「厄除」かわらけのほかにもたくさんの祭祀遺物が見つかっています。その詳しい内容は、2014年3月に報告書が刊行されますのでお楽しみに。
因みに、かわらけ投げの起源となった高尾の神護寺に行って、かわらけ投げをしたことがあります。その際、4枚の皿を買って3枚を投げ、残りの1枚を見本に持って帰りました。その直後から風邪を2度もひいてしまい、なかなか治りませんでした。果たして、「厄除」の効果はあったのか、持ち帰った1枚の「厄除」かわらけが厄を呼び込んだのか………。
(三宅 弘)
-
タグ: