オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品 №289 良い子の皆さんへちょっと一工夫-子ども向け解説パネル
博物館で展示されている資料には、資料名や所蔵先、解説などが書かれた「キャプション」や「題箋」、「解説パネル」と呼ばれるものが添えられています。資料を見るだけでは分からない情報を伝え、見どころを示したり、研究成果を詳しく説明したりする役割があります。
私のおすすめの逸品は、安土城考古博物館の子ども向け解説パネルです。
当館では年に4回、企画展や特別展を開催しているので、その都度新しい解説パネルが必要になります。当館の場合、文章作成、デザイン、印刷、パネル貼り、会場への設営までを、博物館職員の手で全て行っています。
例年、4月から6月の春と、9月から11月の秋には、主に小学6年生の子ども達が、校外学習で多く来館します。歴史学習がはじまったばかりの子ども達にとって、専門用語や難しい漢字の並ぶ解説は、読むだけでも大変です。見学に付き添っていると、展示解説を一生懸命書き写す姿を見かけることがあります。博物館での学びを残そうとしてくれる姿に嬉しい反面、目の前の資料をしっかり見てほしいのにと、もどかしさを感じる瞬間でもあります。
このような子ども達にとって、もっと資料鑑賞の助けとなるような工夫はできないかと、企画展と特別展開催時に子ども向け解説パネルの作成に取り組んでいます。
約100字程度の文章を、展示内容に合わせたオリジナルキャラクターのイラストと一緒にレイアウトしたものです。文章を書き連ねるタイプのもの、Q&A方式にしたタイプのもの、画像や図と一緒に解説するタイプのものなど、展覧会に合わせて考えています。キャラクターを添えているのは、一目で、他の解説との見分けがつくようにしたい、資料や歴史に親しみをもってもらいたいとの考えからです。
難しいところは、限られた文字数でわかりやすく伝えなければいけないことです。易しい言葉を追求しすぎると、文字数が多くなり、まわりくどい表現になってしまいます。この他、資料の鑑賞の邪魔にならないように気をつけています。見どころを絞り、具体的に資料のどこを見ればよいか伝わる文章を心がけています。
こうした解説に対して、来館者アンケートでは、「解説が2つあって分かりにくかった」、「もっと別の情報もほしい」、「こんな文字が見やすいのではないか」といった勉強になるご意見もいただきます。まだまだ試行錯誤中ですが、「子どもと一緒に来て楽しめた」、「大人にも分かりやすかった」と好評をいただくこともあります。お客様から、色々なご意見をいただけたときには、今後も工夫していけたらなと励みになります。
現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ギャラリートーク等の解説イベントの開催が難しくなっています。このような状況で、こうした解説パネルにはより分かりやすさが求められるようになると考えています。どんな状況であっても、誰かの興味・関心のきっかけとなれるような博物館の工夫を今後も考えていきたいと思います。
感染状況が落ち着いて安心しておでかけできるようになった際には、お子様連れの方や博物館に馴染みがない方のご来館も是非ともお待ちしております。(岩﨑里水)