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調査員オススメの逸品第160回 変身にお気づきですか?―「内照式パネル展示装置」

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写真1 信長文書はこちら
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写真2 新しくなった電光パネル
写真2 新しくなった電光パネル
写真3 私のお勧め 飛雲文鬼瓦
写真3 私のお勧め 飛雲文鬼瓦

学芸課長特選「博物館の楽しみ方」。その最大のポイントは、「博物館は常設展示を見ろ!」に尽きると思っています。特別展示、企画展示は、博物館の特色を出しながら、どことも、それなりに気合の入った、時には空回りした「オッと失礼」、内容の濃い展示が楽しめるのは当たり前のことで、それだけ見ていたのでは、本当の博物館の姿、真髄が見えてこないことが多々あります。しかし、常設展示こそは、その博物館の真の姿が見えてくる。これが私のお勧めです。
少し、具体的に説明しましょう。それは「常設展示」と言っても「変化」すると言う事実です。わが安土城考古博物館では、第2常設展示室の古文書や肖像画の展示は、資料を保存する観点から約2か月ごとに展示を替えています。皆さまの興味を引くように「トピック展示」や「ミニ企画」などと名を付けて展示替えする場合もありますが、こっそりと数点の展示物を入れ替えることもあります。さて、有名な信長の「天下布武」印の押された文書資料ですが、これは常時本物が見ていただけるように展示期間や組み合わせなど工夫しています(写真1)。しかし、「天下布武」印の中でも特徴的な「双龍印」をご覧になろうとするなら、2か月に一度は博物館に来ていただき、巡り合いのチャンスをひたすら待っていただく必要があります。逆に言えば、博物館に来ていただく度に「天下布武」印に注目していただければ、今回は「朱印」、今回は「黒印」、やった!「双龍印だ」などと変化を楽しむことが可能になり、次第に当館が信長文書を何点持っているかという、秘められた「実力」までもが明らかなってくるのです。
考古資料では、ここ数年来変化させていない展示部分もありますが、説明文を変えてみたり、写真を追加したり、遺物をひっくり返してみたり、と、それなりに工夫をしています。そうした常設展の変化に注目していただければ、学芸員の考え方や館蔵品の種類など、いろんな事が想像できるようになります。これぞ、達人の博物館見学と言えるでしょう。
次に、これこそ常設と思っている展示物でも、何かの契機に模様替え、リニューアルすることがあります。見た目にはあまり変化していないようですが、実は大きく変化していることもあります。その一つが第1常設展示室、その入り口正面に鎮座する「内照式パネル展示装置」(写真2)、その内容が今年の4月から大きく変化したことにお気づきでしょうか。中央に地図を配し、その周囲に説明や県内を代表する遺跡・遺物の写真を14点配置している展示物です。これが今回お勧めの逸品です。昨年度に何とか予算の都合ができたので、思い切って内容をリニューアルし、4月からお披露目している次第です。お勧めのポイントは、もちろん、その内容。滋賀県を代表すべき最新の遺跡・遺物はこれだ!とお勧めするわけですが、本当の楽しさは、その選定された遺構・遺物から当館の3名の考古担当学芸員の好み、主義、思い込みなどが見え隠れするところです。詳しくは、皆さんで見て、考えていただければと思うのですが、遺跡・遺物の選定には3名の考古担当が意見を言い合い、三者の意見が反映した内容となっているのです。博物館に通っていただき、学芸員と親しくなり、さらに、それぞれの図録や論文を読んでいただければ、この遺跡は誰、こっちの遺物は誰、その展示内容から学芸員の顔が思い浮ぶようになると思います(写真3)。それが、専攻している時代などとも一致しないから面白いところです。これこそ究極の博物館の楽しみ方に通じる道と、私のお勧めのポイントです。これは、展示室全体、特別展や企画展も同じことで、学芸員が思い浮かぶ、そうした見方ができるまで博物館に通っていただき、常設展示をじっくり極めていただければと思います。その第一歩が第1常設展示室「内照式パネル展示装置」になると思います。
エッ!「そんなに常設展示を勧めて大丈夫?」そんな声が聞こえてきました。もちろん、この文章はこれまでの反省と、これからの決意です。こうご期待を!
(細川修平)

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