オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品№379 奇跡的に残っていた大きな壺―六地蔵遺跡(栗東市六地蔵)―
六地蔵遺跡(ろくじぞういせき)は栗東市の北東部に所在する遺跡です。野洲川の左岸にあたり、標高222.9mを測る日向山の北側に広がっています(写真1)。

令和4年度から行われたほ場整備や県道拡幅工事に伴う発掘調査によって、古墳時代から室町時代にかけての遺構や遺物が見つかりました。特に、古墳時代においては中期から後期(1500~1600年間)にかけての竪穴建物30棟、前期から後期(1500~1750年前)にかけての古墳16基が確認されています。
日向山の西麓には立派な横穴式石室が残る日向山古墳(にっこうやまこふん)が所在し、この古墳を含む後期の古墳群が分布しています。今回の発見によって、日向山の周辺にはさらに古い時期から古墳が築かれていたことがわかりました。さらには、古墳が分布する場所の北側には中期以降竪穴建物が点々と築かれており、古墳群の周辺に集落が営まれていたこともわかりました。竪穴建物に住んでいた人々は、日向山の麓に並ぶ古墳を眺めながら生活を営んでいたのでしょう。
古墳には直径22mを測る円墳1基と一辺5~15mを測る方墳15基がみつかっています。これらの古墳には亡くなった人を埋葬した墳丘は残っておらず、その周囲を囲む溝(周溝)だけが確認できました。そのうち、一辺5m以上を測る12号墳とした方墳の周溝からは、大きな壺が横倒しになって出土しています(写真2)。破損している部分があるものの、大きくは壊れることなく土の中に埋まっていました。

壺は土師器とよばれる素焼きの土器で、古墳時代前期のものです。壺の口にあたる口縁部は途中で屈曲して大きく広がる形態をしており、その形態から「二重口縁壺」と呼ばれています。大きさは高さが42.3㎝を測り、丸く膨らんだ体部のもっとも大きな部分では直径35.0㎝を測ります。残念ながら土器の表面は残りが悪く、本来の状態を確認できる部分は少ないのですが、口縁部の外面には赤色の付着物がわずかに認められることから、表面が赤く塗られていた可能性が考えらえます(写真3・4)。


出土した状況から、本来はお供えのために墳丘上に置かれていたものが溝の中に転落したとみられます。このような大きな土器がほとんど壊れずに残っていたことは奇跡的ともいえます。調査にあたっていた調査員や作業員さんも、めったに見ることができない状況にたいへん喜んでいました。
今回紹介した大きな壺などの調査成果は、令和7年10月1日から滋賀県埋蔵文化財センターで開催します「レトロ・レトロの展覧会 2025」で展示いたします。そのほかの遺跡も含め、最新の調査成果を見ていただける機会となっていますので、ぜひお越しください。
【ご案内】 レトロ・レトロの展覧会 2025
期 間 令和7年10月1日(水)~11月10日(月)
時 間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 土・日・祝・12/29~1/3 (11月3日・9日は開館)
場 所 滋賀県埋蔵文化財センター 1階ロビー
JR琵琶湖線「瀬田」駅下車、帝産バス滋賀医大行き「文化ゾーン前」下車(徒歩10分)
入館料 無料
参考文献
・栗東町史編さん委員会編『栗東の歴史』第一巻 古代・中世編 1988
(中村智孝/企画整理課)