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オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.42 図面修正のスグレMONO ―書くように消せる消しゴム―

その他
遺物実測図 (左側:外面、右側:内面と土器断面)
遺物実測図 (左側:外面、右側:内面と土器断面)

埋蔵文化財の調査では、記録の作成は重要な作業です。写真撮影や測量も記録作成ですが、人の手で実際に測定・計測して図面を作成する“実測”作業が大きな割合を占めます。“実測”は1mm単位の方眼紙に鉛筆やシャープペンで記録することは「おすすめの逸品」№28で触れていますが、現地の発掘調査と室内での整理調査とでは、作成する“実測図”が異なります。
発掘調査で実測の対象となるのは、柱穴や溝など、昔の人々が大地に刻んだ活動の痕跡である“遺構”で、作成する実測図は基本的に1/20縮尺となります。これに対して整理調査では、発掘調査で見つかった土器や石器などの“遺物”(出土品)の実測図を原寸(実物大)で作成します。
どちらの図面も、調査成果をとりまとめた報告書に掲載しますが、遺構の実測図は1/50~1/100縮尺に、つまり、遺構実測図は原図(もとの図面)を1/5~1/2サイズに編集するのです。遺物実測図は基本的に1/3縮尺に編集したものとなります。大型遺物の場合は1/6サイズに編集する場合もありますが、打製石器など微細な加工を描き表した図面は、縮小せずに原寸で掲載することもあります。おおざっぱにいえば、遺物実測図は遺構実測図よりも細密な図面といえるでしょう。

“書くように消せる”消しゴムの色々
“書くように消せる”消しゴムの色々 右から、普通の消しゴム・クリップ式消しゴム・薄型ホルダー消しゴム・ペン型ホルダー消しゴム。これまでは、ピンポイントで修正する場合は字消し板を使っていました。

遺物(出土品)は、遺跡の年代を判断する材料となります。特に土器は、これまでの研究によって、形や製作手法の変化をもとにした型式学的方法と層位学的方法が駆使された編年(chronology)がありますので、たとえ小さな破片であっても特徴的な部分であれば、おおよその年代がわかります。報告書は、その利用者が調査成果を共有する手だてとなりますので、掲載する実測図は、遺物の持つ情報を「正確に」描き表す必要があるのです。(遺物のかたちを正確に写し取る道具“マーコ(真弧)”については№18をご覧ください)
前置きが長くなりすぎました。今回紹介する逸品は、納得できる図面の作成に欠かせないスグレモノの消しゴムです。消しゴム本体は太さが直径2.3mmの極細(業界最細だそうです)で、シャープペンシルのようなケースに入っています。使うときは、見た目と同じくシャープペンのようにノックして繰り出します。この出具合いがまた長すぎず短すぎずと絶妙な長さで、ストレスなく仕事に集中できます。ペンのように握って使えることと、スリムな金属製ガイドパイプが長いことから、修正が必要な個所をピンポイントで“書くように消せる”(メーカーウェブサイトから)ので、これを使うようになってからは作業効率があがりました。
今日もまた、こだわりをもって「正確な」図面を仕上げます。でも本当は消しゴムのお世話にならないほうがよいのでしょうけれど・・・。
県立安土城考古博物館の中庭回廊からは、整理作業の様子がご覧いただけます。窓際で実測作業中の机には、この逸品があると思います。

(大崎 康文)

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