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新近江名所図会

新近江名所圖会 第27回 穴太積み-里坊を彩る-

大津市
大津市坂本
滋賀院門跡の石垣
滋賀院門跡の石垣

大津は多種多様な歴史と文化財息づく町です。世界文化遺産の比叡山延暦寺に代表される仏教文化都市、天智天皇が遷都し、藤原仲麻呂(恵美押勝)が宮をつくった古代の首都、湖上に築城された坂本城や大津城、膳所城の浮城がつくられた中世から近世にかけての城郭都市、そして、木曾義仲をこよなく愛し、義仲の眠る義仲寺に自らも眠る芭蕉のふるさととさまざま顔を持っています。
今回は仏教文化都市の象徴、坂本里坊を紹介します。「里坊」とは比叡山の「山坊」に対して、山麓の坊(寺院)の呼び名です。坂本里坊は比叡山延暦寺の門前で、山中での修行を満行した老僧の隠居坊として多くの坊が建てられており、そこでは、いっぷう変わった石垣が多く見られることで有名です。いわゆる「穴太積み」です。

おすすめPoint

日吉社参道から一歩中にはいると、広大な境内に名勝庭園と内仏殿や書院などが建ち並ぶ滋賀院や律院、少し南下すれば荘厳な客殿のある盛安寺などの周辺で、特に見事な石垣を見ることができます。この石垣は、かつて坂本に隣接する穴太に居住する石工集団である「穴太衆」によって積まれた石垣です。
大小の自然石を巧みに積み上げた石積みは、細長い石を使い、長い部分を石垣の奥に持っていく積み方で、石垣の奥には栗石(くりいし)という小石を詰めて仕上げています。こうすることで各石への比重が均等になり水はけが良くなります。
その技術の高さ、非常に堅固であることから、安土城にもその痕跡を見ることができます。自然石を巧みに積み上げ、均整のとれた石垣はぜひ見ていただきたいものです。
古都大津の貴重な文化財を守り伝える坂本、何百年も原形を維持している石垣を見ていると名もなき石工たちの誇らしげな顔が浮かんできます。

盛安寺
盛安寺
竹林院
竹林院

周辺のおすすめ情報

里坊といえば紅葉。日吉大社を参詣し、里坊庭園をゆっくり鑑賞し、名物の蕎麦を食して伝統的建造物群の町並みを散策されてはいかがでしょうか。
特に日吉大社は紅葉だけでなく桜も美しく、見ごたえがあります。
里坊の庭園は、山からの谷水と石材を巧みに取り入れ、滝や池が抜群景観をつくりだしており、山を降った高僧や高僧をしたって訪れる信者も大いに満足したにちがいありません。

アクセス

【公共交通機関】JR湖西線比叡山坂本駅から徒歩20分。京阪石坂線坂本駅から徒歩5分
【自家用車】湖西道路下坂本ICから10分、有料駐車場を利用


より大きな地図で 新近江名所図絵 第1回~第50回 を表示

(葛野 泰樹)

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