記事を探す

オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.5 三角スケールの副尺

その他

発掘調査の現場や出てきた遺物の整理作業で使う道具・文房具類の中には、一般的にあまり知られていないものも結構あります。真弧(まーこ:土器などの表面の形状を写し取る道具)、キャリパー(土器などの厚さを測る道具)などは普通には見かけないものだと思います。ノギス(これも厚さを測る道具)あたりは宝飾品業界などでも使われますが、まあ、あまり一般的には使わないモノでしょう。

三角スケール(30cm)
三角スケール(30cm)

発掘調査の現場でも使われ、設計図や測量図を扱う業界で広く使われるモノに、「三角スケール」なるものさしがあります。縮尺定規の一種で、断面の形状が三角形をしていることから、こう呼ばれます。よく使用する人たちの間では、「サンスケ」と略して呼ばれます。
普通は100分の1、200分の1など縮尺の違う図面を描いたり、測ったりするときに使用する道具です。
通常30cmの長さを使います。発掘現場では、遺構の図面を現地の原寸大のものから縮小して描くのに使いますし、設計事務所などでも、各種施工図を描くときに使われます。ただし、三角スケールはあくまでも寸法測るための道具で、寸法が刻まれている面が摩耗するのを避けるため、線を引くことには不向きで、通常の定規を使う方がよいようです。コンピューターが広く一般に普及し、CADで図面を描くようになった昨今では、だんだんと使われる機会が減ってきているようです。しかし、200分の1や500分の1などの使用頻度の高い規格の縮小図などを読むときに、これがあるといちいち縮小率に合わせて計算しなくても実寸がすぐ判るので、とても便利です。携帯するのに便利な、長さ15cmものの、小ぶりで細身なポケットサンスケなるものもあります。
30cmものには、長さ5cmの副尺と呼ばれるミニサイズがセットでつくタイプがあります。私が普段使っているは、実は本体の30cmの本体ではなく、この5cmの副尺の方です。

三角スケール(5cm)
三角スケール(5cm)

たった長さ5cmの副尺を、一体何に使うのか?この副尺は端から目盛りが刻んであるので、極めて便利なのです。なぜって?それは、使い方を聞けば納得。この副尺、断面形が三角形なので、縦方向に据えても倒れず、自立させて使うことができます。そのとき設置面から目盛りがスタートしていることで、物の高さを設置面から簡単に測ることもできます。さらには、断面形が三角形ゆえに、角が鋭角な小さな出っ張りにも届くので、剥片石器(石鏃・石匙など、大きな固まりの石から割りとった剥片を加工して作られる石器)や小ぶりの叩き石などの石器の実測にとても使い勝手が良いのです。高さがあるものは測れませんが、たいていの石器はこれで十分対応可能なので、私はずっと愛用しています。
私の周りでは、この小さな副尺はあまり使われないようで、せいぜい地図を読むとき使うという人がいるくらいでした。これは、通常の縮尺を読むために利用するまっとうな使い方でしょう。おそらく、石器の実測に使うのは、一部の石屋さん(主に石器を研究対象とする人の愛称?)だけで、この定規の制作メーカーサイドが想定していない使い方の一つに違いありません。
しかし、この副尺は、その名が示すとおり、単体で販売されていないのが最大の難点です。
この小さい副尺を手に入れるために、わざわざ30cmの「サンスケ」を買いました。メーカーさんには、できればこの副尺だけの単体売りを検討してもらいたいと思うのは私だけでしょうか。そして、願わくば5cmものだけでなく、10cm、15cmなどの長さのヴァリエーションを増やしてもらえるとうれしいです。もちろん端から目盛りが始まるもので。ポケットサンスケは使い勝手の良い15cmものなのですが、端から目盛りが刻んでいないため使えないのです。
ともあれ、製図用具を扱っている文房具屋さんに行くことがあれば、一度のぞいて見てください。製図用具はちょっと変わっていて、でも実用的でなかなか楽しいものです。本来の使い方はともかく、アイディア次第で便利に使えるお気に入りのアイテムが見つかるかもしれませんよ。

(小竹 志織)

Page Top