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調査員のオススメの逸品 第233回 夏休みの自由研究企画① 東洋伝統の秘技で〈文様〉を写し取れ! 墨を使ったコピーのワザと道具-拓本道具の三種の神器(画仙紙・墨・タンポ)-  

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今回は夏休みの自由研究の準備企画第1弾として、東洋伝統の秘技をご紹介します。その名も拓本!墨を使ったコピーのワザです。その時に使う三種の神器ともいえる道具が「画仙紙・墨・タンポ」の3つ。これを使って、〈文様〉を写し取ってみましょう!

拓本道具セット(上:タンポ、右下:画仙紙、左下:拓墨)
拓本道具セット(上:タンポ、右下:画仙紙、左下:拓墨)

発掘調査で出土した遺物は、形や文様を図化したり写真を撮影したりして調査研究の基礎資料を作成していきます。その中で使う方法のひとつに、拓本と呼ばれる方法があります。

拓本は土器や瓦、石仏などの形や文様を写し取る方法のひとつで、定規などを使って方眼紙に写し取る実測よりも簡単に作業を行うことができ、写真よりも正確に大きさを記録することができます。石碑や青銅器などに刻まれた文字を研究する学問の流行とともに、文字を写し取る方法として中国で盛んにおこなわれるようになったもので、朝鮮や日本などに広がった東洋独特の手法と言われています。この方法に使用するのが、今回紹介する画仙紙、墨、タンポといった拓本道具セットです。

拓本には、紙を湿らせて行う「湿拓」と湿らさずに行う「乾拓」の二つの方法があります。考古学で行う方法は、「湿拓」が一般的です。また、釣り上げた魚を記録するために写し取る「魚拓」のように遺物に直接墨をつけるのではなく、紙の上から墨をのせていきます。実際の作業は、以下のように行います。

➀ 遺物より、少し大きめに画仙紙を切ります。遺物と画仙紙が動かないように、裏側まで巻き込める大きさにします。薄くて柔らかく、水に強い画仙紙は、墨ののりも良いため拓本に適した紙のひとつです。

➁ 画仙紙の上から、霧吹きでムラなく水を吹きかけます。その後湿らせた布を使って、中心から外側に向かって空気を送りだすようにして、遺物と画仙紙を密着させます。この時、画仙紙が破れないように注意します。もし破れると墨がついてしまい、大切な資料を汚してしまうことになるので注意が必要です。

①画仙紙を切る
①画仙紙を切る
②画仙紙を密着させる
②画仙紙を密着させる

➂ 画仙紙が少し乾くまでの間に、墨をつける用意をします。この時に使用する道具が、タンポです。タンポは綿を布で包んだもので、テープなどを巻き付けて持ち手となる部分を作っています。これをふたつ用意し、ひとつに墨をつけたのちにふたつをこすりつけてムラをなくします。拓本をとる部分によっては、小さなタンポを使用する場合もあります。なお、墨は油性拓本墨を使用しています。貼り付けた紙が多少湿っていてもにじまず、濃淡の調整が可能です。

➃ 画仙紙が白くなって乾いてきたら、いよいよ墨をのせていきます。貼り付けた画仙紙が動かないように注意し、濃度が均一になるように徐々に濃くしていきます。

③タンポに墨をつける
③タンポに墨をつける
④タンポで墨をのせる
④タンポで墨をのせる

➄ 打ち終えたら、画仙紙を遺物から破らないようにはがしていきます。雑誌などにシワにならないように挟み込んで乾かして完成させます。

土器の曲面や凹凸のある瓦の文様などは、シワができやすくきれいに写し取るのが難しいものもあります。しかしながら、形や文様などを簡単にほぼ実物大にコピーできる便利な方法です。画仙紙、墨、タンポといった拓本道具セットは、その方法を支える重要な道具といえます。

⑤拓本完成
⑤拓本完成

きれいに取れた時の感動はなかなかのものので、そういった意味でも夏休みの自由研究にオススメなのですが、2つネックがあるかも。1つは道具。ご自宅にあるご家庭はなかなかないでしょう。ネット販売だと5000~6000円程度しますが、墨運堂さんの「初めての拓本用具セット」などは、必要なものが一揃え入っているので便利かもしれません。

もう一つのネックは拓本コピーを取る対象です。文様のある瓦や土器がご自宅にあるご家庭はなかなかないでしょう。スニーカーの裏などをとっても面白いかもしれませんが、なんといってもおススメはコチラ!毎年夏に開催しております展示・体験イベント「あの遺跡は今」です。

このイベントでは、本格的な道具もご用意した上で、文様のある瓦や土器の拓本を実際にとっていただけます!しかも無料です(今年の案内はこちら)。自分で写し取った拓本を使って、考古学の自由研究をしてみてはいかがでしょうか。皆さんの起こしもお待ちしております。

中村智孝

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