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調査員のおすすめの逸品 №312 縄文土器を復元しよう!―体験学習の相棒たち―

その他
写真1 復元した縄文土器の文様の原体
写真1 復元した縄文土器の文様の原体

滋賀県立安土城考古博物館では、夏休み期間中に体験学習を毎年実施しています。今回はその中でも「子ども考古学教室」の相棒たちである、縄文土器の文様の原体(げんたい:文様をつけるための道具)を紹介します。

私は博物館に勤務して今年で5年目になります。1年目から「子ども考古学教室」(当時は「子ども学芸員」)の担当になりました。まず考えたのは、子どもたちに実際の学芸員や考古学者が研究するような体験をさせてあげられたらいいなということでした。
そこで縄文土器の文様を描くための工具の復元を思いつきました。文様の中でもよく見かける縄文と竹管文(ちくかんもん:遠景中空の管状のもので付けた文様)の原体の復元に取り組むことにしました(写真1)。

写真2 縄文土器復元に使った道具
写真2 縄文土器復元に使った道具

どちらも、子どもだけでなく大人でも初めて作るときはとても苦労します。そこで、博物館のスタッフに原体の作り方をレクチャーし、そこから、子どもたちにもできる原体の作り方を探ることにしました。
縄文原体は一人で作るのではなく、二人一組で作ると簡単にできることが分かりました。つまり、紐を持つ手と撚る手を二人に分けてしまえば、意外と簡単に作れるようになるのです。
竹管文は琵琶湖岸でよく見かける葦(よし)を使って復元を試みました。葦は竹と違って、薄く、その結果、葦の薄さがあだとなって、刃物で加工する途中で割れてしまうことが問題となりました。そのため、まず加工したい部分をヤスリで薄く削り、最後はハサミで仕上げることにより、簡単に安全に竹管文の原体を作る事が出来ました。

写真3 ペットボトルを芯にして縄文土器を復元
写真3 ペットボトルを芯にして縄文土器を復元
写真4 スタッフが復元したミニチュア縄文土器(高さ左:7㎝、右:5㎝)
写真4 スタッフが復元したミニチュア縄文土器(高さ左:7㎝、右:5㎝)

このことから子どもたちへのレクチャーもしやすくなりました。そして、体験本番では、原体が比較的簡単に作れるので、子どもたちは楽しそうに作り、また、粘土に文様を描き、できた文様を見て喜んでくれました。
さて、5年目の今年は8月2日に子ども考古学教室を実施しました。今年は、前々から要望の多かった縄文土器の製作に取り組むことにしました。原体のノウハウは蓄積してきましたので、課題は簡単に縄文土器が作れるかというで点です。これも博物館のスタッフと一緒に縄文土器を製作し、意見交換しながら問題点を解決していきました。結果、ネットをかぶせた棒や空き缶、ペットボトルを芯にして、粘土を貼り付けていくことで、縄文土器のミニチュアが作れるようになりました(写真2)。また、ペットボトルや空き缶はその種類によって様々な形をしているので、選んだ芯によっては本物の縄文土器によく似た器形のミニチュアが簡単に作れます(写真3・4)。以前の体験学習と同様に子どもたちは一生懸命に、また楽しそうに思い思いの文様を描いて縄文土器を作ってくれました(写真5・6)。

写真5 子供たちが復元した縄文土器1
写真5 子供たちが復元した縄文土器1

改めて思ったのは、身の回りにある素材を使うことによって、専門的な体験が簡単にできること、そのためには事前の準備やスタッフの協力が欠かせないことを強く感じました。さらに子どもたちに専門的な研究を分かりやすく伝え、楽しんでもらうことの大変さと大切さを実感しました。
何でもない道具たちですが、私にとってなくてはならない相棒で、思いのこもった「おすすめの逸品」なのです。

写真6 子供たちが復元した縄文土器2
写真6 子供たちが復元した縄文土器2

◆おすすめ情報
現在滋賀県立安土城考古博物館では第64回企画展『発掘された近江―関津遺跡と関津城―』を開催中(令和3年9月20日まで)です。詳細は当館ホームページをご覧ください。(https://azuchi-museum.or.jp/special-kikaku/11227.html)
また、「子ども考古学教室」は令和4年(2022年)3月にも実施予定です。興味のある方は、当館下半期催し物案内(近日公開)をご覧ください。

◆安土城考古博物館へのアクセス
【公共交通機関】JR琵琶湖線「安土駅」より徒歩25分。レンタサイクル10分。
【自家用車】名神高速道路竜王I.Cまたは八日市I.Cより車で30分。名神高速道路蒲生S.I.Cより車で25分。
国道8号線西生来交差点を経由して加賀団地口交差点を右折
(福西貴彦)

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