オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品 No.39 打込棒 -土嚢とならぶブルーシートのおさえ役-
“ここが遺跡の発掘現場!!”と皆さんが認識するのは、どのような時でしょうか。掘り窪められ、むき出しとなった土の上で何やら人が手仕事で土を掘り返している。このような光景をみると「ああ!発掘をしているな」と思うのではないでしょうか。
遺跡の発掘では、掘り下げて古い時代の地面を出して行います。そして、調査中は土をむき出しにするわけですから、この間は陽の光や風雨にさらされてどうしても遺構面(昔の人たちが生活していた地面)は傷んでしまいます。そのため調査中の遺構を保護するのがブルーシートです。夜間や休日の発掘現場では、ブルーシートで調査現場全体を覆います。また、調査中でもその日の仕事上必要のない場所については、なるべく遺構が傷まないようにシートをかけたままにしています。はりめぐらされたブルーシート、この光景も遺跡の発掘現場なのです。
でも、今回のお話はブルーシートではありません。このブルーシートをおさえるための道具の話です。一般的にブルーシートが風で飛んだりめくれたりしないようにするためにオモシに使うのが土嚢(どのう)です。どこの発掘現場に行っても普通に使われています。しかし、この土嚢には一つ欠点があります。調査現場の壁面にシートをかける時です。
掘り窪められた調査現場の壁面も土がむき出しとなっているため、当然傷みやすい。さらに現在の地面から垂直もしくは少し勾配をつけて掘り窪めているため、崩落する危険もあり、調査地が深ければ深いほど遺構の保護以上に気をつかいます。壁面にシートをかける場合も、たいていは土嚢を使いますが、水がたまりやすい土質の現場や、水が湧く現場では難点があるのです。
このような水の処理を常時しなければならない現場では、壁面直下に側溝を掘ります。この側溝を掘ることによって現場内にたまった水を集め、1カ所ないし数カ所でポンプによって汲み上げます。壁面のシートをおさえるのに土嚢を使うと、どうしてもこの側溝に土嚢を置かなければならなくなるのです。そうすると水が流れなくなります。かといって、側溝からはずれた場所に土嚢をおいても、シートをピンと張ることができず、壁面に密着しないため風でめくれたりしてしまうので、シートをかける意味がなくなってしまいます。
そこで土嚢にかわる道具の登場です。それは打込棒。打込棒とはペグともいいます。ロープやワイヤーなどを地面に引っ張り固定するための金属製の棒で、先端は土に打ち込みやすいように尖っていて、上は鈎状やリング状になっています。ホームセンターなどにいけば数百円程度で買うことができます。
これで壁面にかけたシートの下端をとめるのです。シートの四周には必ず金属製のハトメがあり、そこに差し込んだらいいだけです。土嚢と違って水を堰きとめてしまうことはありません。また、多少シートを傷つけるかもしれませんが、真ん中あたりに突き刺すこともできます。さらに土嚢と違って半永久的に使い回しができるのです。
現在、私が担当している発掘現場も常に水が湧き、しかも1m以上も掘り下げています。当然、打込棒は大活躍。このような非常に有用な道具なのですが欠点もあります。それは土質が砂であった場合にまったく効かないということです。砂地でもシートをおさえられる道具、いまだにみつけだせてはいません。またホームセンターをうろうろして有用な道具を見つけなければ・・・
(内田 保之)