オススメの逸品
調査員のおすすめの逸品 No.63 リサイクルの要?-カナメモチの木-
発掘調査の仕事で測量杭を打ち込んだりする時に使う、ハンマーやカケヤ(大きな木槌)、これらの柄が使っている最中にことのほかよく折れます。折れれば当然使い物にならないのですが、ヘッド部分はまだまだ使え、捨てるにはもったいない。そこで柄を交換するのですが、ぴったりの替柄はそう簡単には見つかりません。だからと言ってその辺の木を適当に使えば良いというものでもありません。衝撃に強く、強靭さとしなやかさを併せ持った木を選ばなければならないのです。そんな特徴を備えてよく使われているのが「カシ」です。もともとの製品に使われていたハンマー類の柄もカシです。
しかし大きなカシの木を切って製材なんて、そう簡単には手に入りません。そこで他の種類の木を探すわけですが、とても便利な良い木があります。「カナメモチ」という木です。生垣などによく使われる若葉が赤いあの木です(園芸店で売っているのは西洋カナメがほとんど)。山に行けばよく目にする程度に生えています。木肌は皮が剥けたザラザラした木ですが、木質は組織が緻密な散孔材で赤味がかった美しい材です。そして、気乾比重0.98(木材を乾燥させた時の重さと同じ体積の水の重さを比べた値。数値が大きいほど重く、小さいほど軽い:桐0.29、ヒノキ0.38、ヒノキ0.44、桜0.67、赤樫0.96)と国産材屈指の高い数値で、もう少しで水に沈む重さです。基本的に木は比重が重いほど硬く強いのです。
カナメモチはその緻密さ、色合い、強靭さとしなやかさすべてカシを凌駕するものなのです。しかも使い込んでくるとよい具合に飴色に変わり、そしてツルツル、スベスベの最高の感触となっていくのです。もうこの木を使うしかありません。
ちょうど良い太さの真っすぐな木が結構生えています。これを必要な長さに切って使います。ゆっくりと上手に乾かせば芯持ち材でも割れずに乾かせます。だから面倒な製材も必要ありません。チョチョイと加工すれば最高の柄となるのです。こうして折れたハンマーは修理して蘇り、さらに元よりも良いものになってしまうのです。これリサイクルの極みです。
ちなみにこのカナメモチ、扇の要(かなめ)に使われたからカナメと名付けられたようで、物事の中心・大事なところにぜひ使いたいものです。他の利用としてお勧めなどが箸やシャモジ、スプーンなどの木製カトラリーなどです。カナメモチのもつ肌の美しさと強靭さが最高の逸品カトラリーを作り出してくれます。お手入れも簡単で長持ち、あなたもお一つ作ってみてはいかがでしょう。
(横田 洋三)