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調査員のおすすめの逸品 No.79 カゴ -水中ポンプにつけてゴミ詰まりをなくせ!-

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逸品79ドングリが詰まってしまった水中ポンプ
ドングリが詰まってしまった水中ポンプ

遺跡というのは本当に色々な所にあります。田んぼの中や街中だけでなく、琵琶湖の中であったり、山の中であったり。そこで私たちが遺跡の発掘調査をする時には、対象となる遺跡の立地条件によって調査に必要な道具を変えていきます。基本となる道具は変わらないのですが、地形や土質といった違いによって最適な道具を選ばないと、調査を円滑に進めることができないこともあります。
今回紹介する道具はカゴです。カゴはさまざまなことに使えるのですが、ここで紹介したい使い方は、水中ポンプと組み合わせて使う方法です。水中ポンプとは水を抜く道具で、皆さんの家庭にある方もおられると思いますが、洗濯機に付いているお風呂のお湯を取るポンプを大きくしたようなものをイメージして下さい。滋賀県内には、琵琶湖の中はもちろん、調査によって地面を掘り下げたら水が湧き出る場所や、水は湧かないものの降った雨がしみこまず、溜まってしまってなかなか抜けない場所などがあります。そんなときに活躍するのが水中ポンプです。時には何台もの水中ポンプを使って排水することもあります。

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右端がウォーターセパレーションのメッシュカゴ

川や沼の跡を調査する時は、水がコンコンと湧き出すため、常時排水を行います。この水抜き作業ですが、普通に水を抜くだけなら水中ポンプだけで事足ります。川というのは、一定の水流がある場合には砂が堆積するのですが、流れが遅くて淀んだような場合は粘土が堆積し、その中に葉っぱや小枝・ドングリなどが腐らずに残っています。実はこの植物がやっかいなのです。水中ポンプだけだと、水と一緒に葉っぱやドングリなどが寄ってきてポンプを詰まらせてしまうのです。もうそうなったら大変。ポンプは水を吸い込まず、カラまわり。水位は上昇して調査地は水浸し。そのため、このような場所での調査の時には、常にポンプの目に詰まった植物を取り除いてあげなければならないのです。しかし、休日や夜間にこうなってしまったら水位もあがり、ポンプ自体も完全に水没し、本当に大変です。時にはどこからやってきたのかドジョウやオタマジャクシが詰まっていることもあります(しかも死んでいる)。これを取り除くのは別の意味でも大変な作業です。

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ウォーターセパレーションのメッシュカゴをこのように使います。

そこで、この労力を省くためにカゴが登場するのです。葉っぱや小枝・ドングリが直接ポンプに寄りつかないようにカゴの中にポンプを入れて使うのです。すると、カゴの目のまわりには植物は付きますが、ポンプまでは達しないため、詰まらずに水を抜き続けてくれます。ただ、カゴといってもさまざまなタイプのものがあります。浅めのカゴ、調理に使うザル、時には自転車の前カゴを転用することも。どれも一長一短があります。私がこれまでに用いたカゴのなかで最も良かったのは、ウォーターセパレーションのカゴです。ウォーターセパレーションとは、土壌を水洗して炭化物や種子などの微細な遺物を採取する道具ですが、これに用いるメッシュカゴです。深みもあり、カゴの編み目の大きさもほどよく、何よりもステンレス製で丈夫です。昨年行った発掘調査では、台風にともなう大雨で調査地の壁が一部崩壊し、水中ポンプとともに埋まってしまいましたが、ゆがみはしたものの大丈夫でした。このメッシュカゴのおかげで、その調査もなんとか無事終えることができました。ただ、できれば水の湧かない場所で調査をしたいものです。

(内田 保之)

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