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新近江名所図会

新近江名所圖会 第101回 石垣に注目してみよう―彦根城

彦根市
彦根市金亀町

彦根城は第92回でも取り上げていますが、今回は石垣について取り上げてみたいと思います。

内堀沿いの石垣
内堀沿いの石垣

彦根城の表門近くの内堀沿いに見られる[石垣]―[土塁]―[石垣]という3層構造は鉢巻腰巻石垣といい、ごく一部の城(江戸城や会津若松城の一部)にだけ見られる特殊な積み方です。これは高い石垣を積むことが出来ない土地で、間に芝土居を挟むことで石垣全体の重量を軽くし、地盤への負担を軽くする効果があると言われています。
彦根城はリサイクルの城として有名ですが、この石垣にも近隣の長浜城や佐和山城の石材が転用されたと伝えられています。しかし、現在佐和山城に残されている石(チャート)と彦根城の石垣に使われている石(湖東流紋岩が多い)とでは種類が異なっていて、少なくとも石垣の表面に見えている石は佐和山城の石ではないようです。表からは見えない内側(栗石)に使われたのでしょうか? 謎は深まります。
また、彦根城は多くの大名の協力のもと、天下普請で作られたお城です。通常、こういったお城の石垣には、石材を切り出したり運んだりした大名家が、家紋などを彫り込むことが多く見られます。しかし、彦根城の石垣にはそういった印が見られません。彦根城の石垣は誰が、どこから運んで積み上げたのか。これも不思議ですね。

おすすめPoint

天秤櫓は第92回でも取上げられていますが、今回はその石垣に注目してみましょう。よく見ると、この石垣は左右で積み方が異なっています。天秤櫓にかかる橋から見て右側(東側)が築城当時の石垣で、大きな石の間に小さな石を組み合わせて積み上げるごぼう積みという工法で積まれています。一方、左側(西側)は幕末の改修で積み直された石垣で、同じような大きさの石を隙間が出来ないように整然と積み上げる落し積みという工法で積まれています。これだけの高さの石垣を半分だけ改修するという大工事に思いを馳せてみてください。

西側(幕末)
西側(幕末)
東側(築城当時)
東側(築城当時)

周辺のおすすめ情報

現在、彦根城では佐和口多聞櫓が公開されています。彦根駅からお城に向かって歩いていくと、最初に目にする櫓です。中に入られたら、足元の方に開けられた四角い矢狭間と三角形をした鉄砲狭間に注目してみてください。
それから窓にはめられた格子にも注目です。なぜ窓枠に対して並行な[□ □ □]という並びではなく45度回転させた[◇ ◇ ◇]なのでしょうか? 実はこれは視界を広く確保する効果があります。
もっと視線を上に上げて、窓枠の上を見てみましょう。よく見ると、壁の厚さが薄くなっているのがわかります。櫓の壁は外から打ち込まれる鉄砲に耐えるため、中に色々なものを詰めて頑丈にしてあります。しかし壁を全部厚塗りするにはコストも時間もかかります。そこで櫓の下2/3、人の頭がある場所までだけが厚く塗られているのです。

アクセス

【公共交通機関】JR西日本 東海道本線 彦根駅下車 徒歩約15分
【自家用車】名神高速道路彦根IC下車10分、有料駐車場あり
・彦根城博物館
開館8時30分 閉館17時(入館は16時30分まで)
休館日12月25日~12月31日
[彦根城・玄宮園入場券]大人 600円・小中学生 200円
[博物館入館料]大人500円・小中学生250円
[彦根城・玄宮園・彦根城博物館セット入場券]大人1000円・小中学生350円
※30名以上からの割引あり


より大きな地図で 新近江名所図会 第51~100回 を表示

(伊藤愛)

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