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上御殿遺跡出土玉類

オススメの逸品

調査員のおすすめの逸品 No.85 古墳時代のアクセサリー -高島市上御殿遺跡出土の装身具-

高島市
上御殿遺跡出土玉類
上御殿遺跡出土玉類

「あ、なんか青いきれいなもんがでたわ。」と作業員さんの声がした。

作業の手を止めて振り返ってみると、周りにいた人たちが集まっている。

「すごい、すごい!」
「なんやそれ?」

口々に発せられる声に、いったい何が出てきたのかと思いながら近寄っていくと、作業員さんの手の中には、きらりと光る勾玉があった。

「まだ、なんかあるで」

その声に視線を移してみると、勾玉が出土した場所には小さな青く光るものがいくつも見えた。そこには、たくさんのガラス製小玉が散らばっていた。

上御殿遺跡 木棺墓
木棺墓

昨年度行った高島市上御殿遺跡の調査で、古墳時代前期~中期(1,750~1,600年前)の木棺墓から、勾玉とガラス製小玉が出土しました。木棺墓は、長軸295m・短軸102m・深さ35mの大きさがあり、木棺そのものは残っていなかったものの、土層の観察などから組合(くみあわせ)式木棺が納められていたと考えられます。また、勾玉とガラス小玉は出土した位置から木棺に葬られた被葬者の首飾りなどに使われていたと判断されます。
現在でもアクセサリーとして使用されているように、発掘調査で出土する遺物のなかでも、勾玉はポピュラーなもののひとつです。C字状に屈曲した形をして、丸みを帯びる一端に穴があけられているその姿は、多くの人がイメージできるのではないでしょうか。
勾玉は縄文時代から作られていますが、その形の由来には様々な意見があり、装身具としてもともと使われていた動物の牙をモチーフにした、などの説があります。また、勾玉にもいろいろな形があって、今回出土したような典型的な形をしたものは、弥生時代中期から作られるようになります。
使われている材料は、うすい緑色をした硬玉です。硬玉はヒスイとも呼ばれ、国内では数か所の産出地が知られています。ただ、勾玉などに使われているのは新潟県糸魚川市で産出するものに限られていて、今回出土した勾玉もここから運ばれてきたとみられます。勾玉にはメノウ・壁玉・滑石・ガラスなど様々な材料も使われますが、古墳時代中期までは硬玉が主に使われています。
勾玉とともに出土したガラス製小玉は、2~4mm程度のとても小さなもので、約15㎝四方の範囲から82個が見つかりました。大きさや色で2種類に分けることができ、大きめの青色のものと、小さめの紺色のものがあります。小玉の制作方法はいくつかあり、鋳型を使う方法、やわらかくしたガラスを金属の棒に巻きつける方法、細く引き伸ばした管状のものを切断する方法があります。出土したものも、いずれかの方法で作られたのでしょう。
このような装身具は、古墳から出土することが一般的で、木棺墓からの出土はとてもめずらしい事例です。木棺墓というお墓の性格やこの地域の古墳文化を考える上で、貴重な資料と言えます。なお、滋賀県埋蔵文化財センターで7月21日から開催する『レトロ・レトロの展覧会』で、これらの勾玉とガラス製小玉を展示しています。ぜひ、ご覧ください。

(中村智孝)

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