記事を探す

新近江名所図会

新近江名所圖会 第23回 源内峠遺跡-甦った古代の製鉄遺跡-

大津市
大津市瀬田南大萱
源内峠遺跡復元製鉄炉
源内峠遺跡復元製鉄炉

源内峠遺跡は、瀬田丘陵のほぼ中央に位置する、大規模な古代の製鉄遺跡です。
大津市瀬田南部から草津市野路南部にかけては、標高130~160mほどのなだらかな丘陵が広がり、瀬田丘陵と呼ばれています。源内峠遺跡を含む一帯はびわこ文化公園(文化ゾーン)として、県民の文化に親しむ憩いの場になっています。
今から40年ほど前、地元の小学生が林の中で地表に出てきた鉄滓(鉄を作る際に大量に出る不純物)を見つけ、製鉄遺跡の存在が明らかになりました。その後、1977年度・85年度・97年度・98年度の計4度の発掘調査が実施され、2001年には発掘調査報告書が刊行されました。そして、2006年には国史跡(瀬田丘陵生産遺跡群)に指定されました。
発掘調査の結果、7世紀後半頃の製鉄炉が4基発見され、製鉄炉の内法は長さ2.5m、幅25㎝程で、当時の製鉄炉としては国内最大規模の製鉄炉です。また、鉄滓が50トン以上あったことが確認されており、操業規模も大規模であったと考えられます。源内峠遺跡の製鉄操業は操業時期と地理的状況から、大津宮、藤原京造営などの古代律令国家建設を支えた鉄生産であったと歴史的評価を与えることができます。

おすすめPoint

復元製鉄炉 地下構造造成作業
復元製鉄炉 地下構造造成作業

源内峠遺跡は1998年の発掘調査後、保存・埋め戻しされ、現地は更地の状態でした。この状況に対し「地域交流の核となり得るものが、このまま埋もれてしまうのは惜しい」と地元の有志が立ち上がり、滋賀県教育委員会、大津市教育委員会、財団法人滋賀県文化財保護協会も協力して源内峠遺跡復元委員会を立ち上げました。2005年11月のことです。
現在、源内峠遺跡には製鉄炉が復元されています。この復元製鉄炉は、地元の有志を中心とした、源内峠遺跡復元委員会によって手作りで作られたものです。
源内峠遺跡復元委員会は、製鉄炉が保存されている場所に、当時の製鉄炉を復元する作業に乗り出したのです。
復元作業は手探りで進められました。1300年前の製鉄炉だけに、詳しい構造はわかりませんでした。遺跡の調査結果を慎重に検討し、設計図を手作りで作成し、少しずつの復元ではありましたが、2007年10月、製鉄炉が復元されました。なお、 製鉄炉の高さは1mほどと推定されますが、安全上の観点から60㎝ほどに復元されています。

復元製鉄炉 築炉作業
復元製鉄炉 築炉作業
復元製鉄炉 完成式典でのイベント
復元製鉄炉 完成式典でのイベント

復元製鉄炉完成後、地元では、源内峠遺跡を活用した活動として、周辺遺跡の歴史探訪、製鉄実験や子ども鉄サミット、滋賀県埋蔵文化財センターでの展示会などが行なわれました。現在は、源内峠への古道の復元整備などが進行中です。源内峠遺跡は、歴史と自然を堪能できるエリアとなっています。

周辺のおすすめ情報

源内峠遺跡は、びわこ文化公園内(文化ゾーン)の一画にあり、遺跡の見学だけでなく、周辺の季節の移り変わりを感じさせる自然が広がっており、公園の散策などを楽しむことができます。
また文化ゾーンには、滋賀県立図書館、滋賀県立近代美術館、滋賀県埋蔵文化財センターなどもあり、歴史、文化を満喫することもできます。
また、少し足を伸ばせば、周辺には山ノ神遺跡、野路小野山遺跡、近江国庁跡などの7世紀から8世紀の遺跡がたくさん存在しています。滋賀県文化財保護協会では、周辺遺跡の散歩マップも作成していますので、散歩マップを片手に遺跡探訪をしてみてはいかがでしょうか。

アクセス

【公共交通機関】JR琵琶湖線瀬田駅から帝産バス・近江バス滋賀医大方面行きで文化ゾーン前下車徒歩約10分
【自家用車】名神高速道路「瀬田西I.C.」より東へ5分、名神高速道路「草津田上I.C.」より西へ5分、駐車場あり


より大きな地図で 新近江名所図絵 第1回~第50回 を表示

(大道 和人)

<参考資料>
・『源内峠遺跡』滋賀県教育委員会・公益財団法人滋賀県文化財保護協会2001
・『国づくりを支えた焔』近江歴史探訪マップ8 滋賀県教委・大津市教委・草津市教委・財団法人滋賀県文化財保護協会
2006
・『よみがえる源内峠製鉄炉』源内峠遺跡復元委員会 2008

Page Top