新近江名所図会
新近江名所圖会 第178回 ひっそりと佇むかくれ里-教林坊
「私が興味をひいたのは・・・(中略)いきなり山へつづく急勾配に作ってあり、よく見ると、それは古墳を利用してあるのだった。横の方に、羨道も現れている。その石室の巨大な蓋石を、そのまま庭石に使ってあるのが、不自然ではなく、日本庭園の生い立ちといったものを見せられたような感じがする」。これは白洲正子さんの『かくれ里』の「石の寺」に登場する教林坊の庭園の一節です。
教林坊は天台宗の寺院で、小堀遠州作と伝わる庭園があり、最近では、紅葉のシーズンにライトアップされ、多くの人が観光に訪れます。
お寺の駐車場で車を降り、質素な作りの総門をくぐれば、竹林が広がっています。そこから五分ほど歩くと、表門にたどり着きます。この表門の周辺も紅葉がたくさん植えられており、紅葉のシーズンは庭園と並んで見どころとなっています。表門をくぐるとすぐに書院があり、その脇をぬけると庭園を散策することができます。
山の斜面を利用して庭がつくられており、散策路は斜面上方から庭全体を眺めながら、本堂、書院へと戻ってきます。本堂脇には、白洲さんが「古墳」と表現した「太子の説法岩」と「霊窟」を見ることができます。書院の座敷の脇には水琴窟があって、周りが非常に静かで澄み切った音色を聴くことができます。書院は江戸時代前期のヨシ葺きの建物です。庭園を見るのはやはり座敷から眺めるのが一番ですが、その中でも障子を掛け軸幅で開け放って眺める「掛け軸庭園」は趣があってぜひ見ておきたいものです。
おすすめPOINT
おすすめポイントは、白洲さんも『かくれ里』に紹介しているように、庭園も雰囲気があっておすすめですが、ここではあえて書院の屋根裏を紹介したいと思います。
通常、お寺の屋根裏に上がる機会はありませんし、開放しているところもあまり聞いたことがありません。ここ教林坊では書院の屋根裏を見ることができます。決して広くはありませんが、ヨシ葺きということもあり独特の雰囲気があります。そして、大黒さんが祀られており、訪れた人が結んだのであろうおみくじが一面にあります。この何とも言えない雰囲気をぜひ味わってみてください。
周辺のおすすめ情報
教林坊のある繖山周辺には、繖(きぬがさ)三観音として教林坊といっしょに観光PRしている石馬寺や観音正寺、また白洲さんの『かくれ里』の「石の寺」にも登場する奥石神社や桑実寺等,みどころ満載です。
-
タグ: